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第3号 クレジット・クランチが始まった消費者金融
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チーフエコノミスト 大中道 康浩

消費者金融会社の新規貸付率が低下している。例えば、武富士では昨年初の59.9%に対して今年1月は53.5%、アコムでは66.0%から47.4%に低下している。新規貸付率は、申し込みがあった件数のうち実際に貸付が実行された比率なので、貸付率の低下は申し込みにもかかわらず資金を借りられなかった人が多くなっていることを示している。

この背景には、昨年末の貸金業法の改正があるとみられる。改正では、グレーゾーン金利、すなわち出資法の上限29.2%と利息制限法の上限20%との間での金利設定と、年収の3分の1を超える貸付けが、3年間の準備期間経過後は禁止されることとなった。 消費者金融業界では、高い貸し倒れリスクを反映して貸付金利は高い。実際、消費者金融業界の貸付平均金利は21%程度となっている。グレーゾーン金利の廃止で、各社は貸付金利の引き下げを強いられるため、顧客選別を強化して、貸し倒れリスクの低下を図ることが予想される。冒頭で紹介した成約率の低下という事実は、早くも貸金業法改正の影響が表面化し、クレジット・クランチが始まったことを示唆しているように思われる。

気になるのは、これがどのような影響を経済全体に及ぼすのかということであろう。最も懸念されるのは、消費者金融会社によるクレジット・クランチが所得制約となり、個人消費が悪化するリスクだろう。 もっとも、クレジット・クランチが働いても、所得水準が比較的高ければ、貯蓄の取り崩しや他の借入手段への切り替えで、悪影響を緩和することができる。だが、消費者金融の場合、低所得者と言われる年収300万円以下の割合が4割程度あり、利用者の平均年収が400万円台後半に止まっており、代替手段の確保は難しいかもしれない。また、返済のために借入をする人の割合はそれほど多くなく、月々の資金繰りやレジャー・娯楽等の資金確保のために借入を行う人が多いようだ。したがって、借入不能となれば、この影響はほぼストレートに消費に及んでしまう懸念がある。

ここでクレジット・クランチによる影響額の試算について、(1)貸付基準の強化による影響、(2)年収基準に引っかかって、追加的な貸付を受けられないことによる影響という2つのアプローチを考えてみる。 前者の(1)については、業界団体による推計値で、グレーゾーン金利を前提にしたビジネス・モデルを18%の貸付金利に変更した場合に予想される与信供与率の変化をみたものがある。これによれば、与信供与率が2005年度の実績87.7%に対して、57.5%に落ちるとされており、その結果、380万人が貸付けを受けられないという。なお、この推計は、業界がグレーゾーン金利廃止に抵抗するために提出した資料なので、過大評価のきらいがある。

後者の(2)については、借入社数別に見た貸出残高表(下記の図表参照)で、3社以上で借入している人たちで追加借入が不能になると考えてみたい。これは、消費者金融を利用する人の平均年収が400万円台後半なので、3社以上借入のところで年収の3分の1を超えてくるからだ。

(1)と(2)の推計人数をあわせると、影響を受ける人々は380〜530万人となる。このうち半分程度が他の金融機関や親兄弟・知人などから借りられるとみる(消費者金融利用者調査などを踏まえた推計)。そして、一人当たり平均借入残高である101万円を期間3年、金利21%で元利均等返済する場合、年間返済額は3万8千円となるが、その返済分だけ所得制約が効いて、消費が減少するという前提で試算を行ってみよう。 単純な掛け算から、消費の減少額は9千億〜1兆2千億円となり、減少率にすると▲0.3〜▲0.4%という数字が出てくる。ここで、3年後から改正ルールが適用されることを考えて、各年均等に影響が出るとすれば、毎年の影響は▲0.1%という結果を得る。

これはマクロ的には誤差の範囲内で、予想されるクレジット・クランチのインパクトはほとんど無視できる。とはいえ、足許で成約率が急速に低下したことは、影響が3年間均等に出てこない可能性も示唆しているように思われ、事態の推移には注意が必要だろう。

総量規制で信用を受けられない人数

総量規制で信用を受けられない人数

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