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第43号 中国のインフレ懸念 〜豚肉価格が大幅上昇
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チーフエコノミスト 柿沼 点

金融引き締めはマネーの伸びを抑制しつつあるが・・・
では、今後、物価上昇のペースダウンが期待できるのだろうか?確かに、相次ぐ金利や預金準備率の引き上げに当局の指導も加わり、貸出やマネーの伸びは抑制されつつある。しかし、前述のように電力や天候要因が供給面に不安を投げかけている一方、個人消費や固定資産投資が高い伸びを保っているほか、輸出も堅調に推移しているなど、需要は総じて強い。また、食料に関しては、前年比1〜2割増程度に上る最低賃金の引き上げが、低所得層(消費に占める食料のウェイトが最も高い)を中心に需要を底上げしている可能性もある。

重要食材の豚肉価格の急騰は懸念材料
こうした中、特に注目すべきは豚肉価格の高騰である(図表3、指数は上昇率からの試算値)。中国における豚肉は必需品的な色彩が強く、米国のガソリンの様に家計のインフレ期待に及ぼす影響が大きいとされるが、5月の物価上昇率は食料の約1割に対し、豚肉は約4割に達した。これは象徴的な意味に止まらず、国家統計局によると、「CPI上昇率の前年比5.5%のうち2割弱は豚肉による」とされている。また、豚肉価格20%上昇でCPIは0.6%上昇するとの試算(2011.6.20新華社記事)から逆算すると、豚肉のウェイトは消費の3%、食料の約1割を占める。日本のCPIに占める豚肉のウェイト(ハムやソーセージ等加工肉を含む)が消費の1%、食料の4%に止まるため、中国の豚肉ウェイトは日本の約3倍にあたる。

図表3の豚肉価格指数試算値では、直近5月に最高値に迫っているが、6月の週次データや各種報道では既に2008年の最高値を更新しており、状況は深刻である。2008年の豚肉価格高騰は口蹄疫が契機だったが、今回は疫病に加えて飼料となるとうもろこし価格の上昇が背景にある(図表4)。国際的には、豚肉ととうもろこしの価格は必ずしも連動しないが、飼料を輸入に頼る中国では、両者の価格変動が結びつきやすく、相関は高い。とうもろこし価格は、6月中旬以降、調整の動きも見られるが今後には予断を許さない上、国内の養豚農家が価格変動リスクの大きさや子豚価格の高騰を嫌って増産に二の足を踏んでいると伝えられており(2011.6.20 新華社)、中国国内の豚肉の需給逼迫は当分続くように見える。

中東の例を引くまでも無く、食料価格の高騰が低所得層の不満を高めることは中国の当局も十分承知しているものの、一定の成長を確保しつつ、価格を抑制することは容易ではない。既に広州で起きた暴動の背景には物価高騰への不満も取り沙汰されており、中国の食生活における豚肉の重要性を鑑みると、その価格高騰は社会的な不安を高めかねないリスク要因として今後とも注視しておく必要があると考えられる。(了)

「図表3.豚肉価格の急騰は懸念材料」と「図表4.とうもろこし価格の急騰が一因」

 

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