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第30号 「孫子」に学ぶ資産運用
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チーフストラテジスト 門司 総一郎

今週のトピックス−「孫子」に学ぶ資産運用

2005年12月14日に始まったこのストラテジストコラムも、はや一周年を迎えました。ここまで続けることが出来たのもひとえに皆様のおかげと感謝しております。今回は一周年(及び30回)記念特別企画として、「『孫子』に学ぶ資産運用」をお届けします。「孫子」は中国の春秋時代の呉の将軍孫武の著作とされる戦略・戦術書で(孫武の子孫と言われる戦国時代の斉の兵法家孫臏の著作との説もありますが、最近は孫武の著作との見方が一般的となっている模様です)、プロイセンの軍人クラウセヴィッツの「戦争論」と並ぶ東西の二大兵法書とされています。

2007年のNHK大河ドラマは井上靖原作の「風林火山」ですが、この言葉は武田信玄が「孫子」の一節である「その疾きこと風の如く、徐かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如く」(軍争篇第七)を旗印としたことに由来します(余談ですが、「山」で終わりではなく、この後に「知り難きこと陰の如く、動くこと雷震の如し」と「陰」、「雷」が続きます)。その他に「彼を知り己を知れば百戦殆からず」(謀攻篇第三)、「始めは処女の如く(中略)、後は脱兎の如く」(九地篇第十一)なども「孫子」に見られる言葉です。また、積水化学の社名は「勝者の民を戦わしむるや、積水を千仞の谿に決するは形なり」(形篇第四)から取ったもので、水を満々とたたえた状態を指します。

以下、「孫子」の中から資産運用や株式投資に応用できそうな言葉を紹介させていただきます。こじ付けっぽい箇所もあるかもしれませんが、ご容赦頂けます様お願いします。まずは戦争を始める前の心構えから。

「兵は国の大事なり。死生の地、存亡の道、察せざるべからず。これをはかるに五事を以ってし、これをくらべるに(七)計を以ってしてその情をもとむ」(計篇第一)
(意味)「戦争は国家の大事であり、その存亡や国民の死活について深く考えなければならない。勝算について(道、天、地、将、法の)5つの基準から検討し、(君主の人望、将軍の能力、時期・地勢の有利・不利、法令の徹底度合い、軍隊の精強さ、士卒の鍛錬度合い、賞罰の明確さの)7つの観点を踏まえて判断するのである」

「孫子」の冒頭に来る文章です。「孫子」については「戦術マニュアル」的なイメージがあるかもしれませんが、実は戦争開始の条件、財政負担、戦争に先立って行うべき外交上の手段などといった戦略的な部分から説き起こしており、これが現在でも高く評価されている理由です。また、勝算の判断にあたって五事七計と言った具体的な基準を示していることも注目されます。運用開始に先立って、期待収益率、リスク、許容できる投資期間、将来のキャッシュフローなどを検討して決定するアセットアロケーションに通じる部分があると言えます。

「昔の善く戦う者はまず勝つべからざるを為して、もって敵の勝つべきを待つ。勝つべからざるは己にあり、勝つべきは敵にあり」(形篇第四)
(意味)「古の名将はまず負けない体勢を作って、敵に隙が出来るのを待った。負けない様にするのは味方の問題だが、勝てるかどうかは敵にかかっている」

いきなり勝ちに行くのでなく、まず自陣を整備して守備を固め、その後、敵に隙が出来た箇所を攻撃することにより、勝利を収めるとの考え方です。「守備」=「基本アセットアロケーション/業績好調な割安株に分散したポートフォリオ」、「隙」=「資産価格/株価の下落に伴う投資機会の発生」、「攻撃」=「売られ過ぎや割安となった資産/銘柄の積極組み入れ」と読み替えれば、そのまま資産運用や株式投資にも当てはまります。

 

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