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2016/3/14

株式運用部

永田 芳樹

※このレポートでは、日本株ファンドマネージャーが注目しているトピックなどを毎週お届けします。

 

日本を代表するビジョンを持った経営者といえば誰でしょうか。多くの人が名前をあげるのがファーストリテイリングの柳井正氏、日本電産の永守重信氏、そしてソフトバンクグループの孫正義氏です。

 

先日、その孫氏を研究した本を読みました。私はもともと孫氏にはあまり良い印象を持っていませんでした。というのはソフトバンクの決算説明会での、平易な英語でわかりやすいパワーポイントを使った卓越したプレゼンテーションは素晴らしいのですが、どちらかというと自社の得意分野を強調して説明する一方、弱みについてはあまり触れないなど、やや客観性に欠ける印象をもっていたからです。ただこの本を読んで、理念とビジョンを持った日本のリーダーとしての孫氏のすごさを再認識させられました。

 

孫氏は高校を辞めアメリカに渡り、そこでカリフォルニア大学バークレー校を卒業しました。大学時代に中心メンバーとなって発明した「音声装置付き多国語電子翻訳機」の特許をシャープに1億円で売り、それを元手に日本で起業することを考えました。

 

その後設立した日本ソフトバンク時代には、持ち前の行動力と人柄と発想力で当時ゲームソフト大手だったハドソンのソフトを、大手家電量販店の上新電機と独占取引を締結するなど、若かりし頃から人並外れた独創力を発揮しました。

 

ソフトバンクの優れたところは創業当初から事業領域を情報産業に絞っていたことです。さらに本業は技術開発でなく、優れた技術を持つ企業と組んで一緒にビジネスを提供していくモデルを考えていたことです。創業当時の1981年はまさにパソコンの黎明期でした。この時代、PCビジネスといえばハードで成長することを考えるのが普通でしたが、ソフトバンクは創業時から経営理念として「情報革命で人々を幸せに」を掲げていました。ソフトバンクは、ソフトウエア販売、パソコン情報誌、ラオックスのザ・コンピュータ館、当時の世界最大のコンピュータ関連見本市コムデックスの買収、ヤフーへの投資、ヤフーBBによるブロードバンドの普及、アリババへの出資、ボーダフォン日本法人の買収による携帯電話事業参入、スプリントの買収による米国携帯事業の参入など事業のスケールはどんどん大きくなっていきました。こうした拡大が続く中でも、2003年以降は、増資以外の資金調達に成功してきた巧みな財務戦略も、他社を寄せ付けないものです。

 

ところで、ソフトバンクの歴史を見ていくと、自分でモノを作ったり、世界で最初に何かをしたわけでないことに気付くと思います。ただその時点の消費者の感じる不便さ、価格への不満などを解決することで成長してきたのです。これには多額の投資が必要で一見ギャンブルに見える意思決定もありましたが、大事なところで成功してきた理由は、「情報革命」という軸をぶれずに追求してきたからといえます。

 

最近このソフトバンクに似た理念を創業時から掲げる企業に出会いました。福利厚生代行サービス大手のベネフィット・ワンです。この会社は「サービスの流通創造」を創業時から掲げています。歴史のあるモノの物流と異なり、サービスはインフラが未整備でその結果、市場は未成熟です。サービスは季節による繁閑差があり消費者とサービス提供企業との間に需給ギャップが起こりやすく、相互に機会ロスが発生する問題を抱えています。この需要と供給をインターネットでマッチングさせ需給調整を行うのが、ベネフィット・ワンの考える「サービスの流通」です。

 

この会社は一般的には福利厚生代行の会社としか認識されていませんが、実はグルメ、エンタメ、ヘルスケアまで取扱い領域を拡大しつつあります。福利厚生代行業務と同じようにユーザー課金のみを収益源にし、企業の出す販促費は全額ユーザーに還元します。そのため世の中のどのサイトよりも廉価な価格でサービスを提供できるのです。ソフトバンクは「情報」を経営理念の軸にしていますが、ベネフィット・ワンは「サービス」を軸にし、消費者の求める不便さの解消や最安値を提供している点はソフトバンクと同じだと思います。

 

ベネフィット・ワンの社長にソフトバンクの理念に似ているのではないかと尋ねてみると、もともとソフトバンクとの合弁会社で、創業前に孫氏と一緒に働いていたことがあるとのことでした。やはり若い頃の出会いは理念を作り上げる上で重要だと感じました。

 

最近はビジョンという言葉がはやっています。ビジョン(Vision)の語源はvis(見る)+ion(すること)ということで、目に見えるようにすることという直訳になります。その前の段階に理念があります。理念はもっと抽象的なものですが、この理念をぶれずに貫き通せる会社を探していきたいと思います。

 


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