I oTの夢に一口乗ってみませんか?

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2016/8/1

株式運用部

永田 芳樹

 

※このレポートでは、日本株ファンドマネージャーが注目しているトピックなどを毎週お届けします。

 

先日、1年ぶりにソフトバンクの決算説明会に行ってきました。説明会でまず感じたのは、孫社長の顔が明るかったことです。ネットで同時中継されているためか、巨額買収を発表した後にしては出席者が少なく、マスコミの方が目立つほど、機関投資家は少ない印象でした。ただ生で顔や張りのある声を聴き、過去の説明会と頭の中で比較すると、スプリントの苦悩から抜け出したことを強く感じました。実際説明会で孫社長は、「2年前は地獄」と言っており、加入者減や貧弱な通信設備に、どれだけ苦しんでいたかがうかがわれます。ソフトバンクの決算説明会の資料は苦しい時は、競合他社よりどれだけすごいかのオンパレードになるのですが、今回の資料の流れを見ると、ソフトバンクはもはや日本の通信キャリアは競合として意識していないようです。

 

説明会の半分近くは買収したARM社についてでした。そもそもARMとは何でしょうか?少しPCやスマホのスペックに興味がある人は、ARMアーキテクチャという言葉を聞いたことがあると思います。AppleのiPhone6に使われているA8プロセッサやアンドロイドスマホに使われているQualcomm SnapdragonもARMアーキテクチャを使ったアプリケーションプロセッサです。

 

ARMは製品を出荷しているのではなく、ARMアーキテクチャという設計思想を様々な企業に売っています。それを付加価値に見合ったロイヤリティという形で受けています。高機能化と低消費電力化を実現するARMアーキテクチャは、自社では半導体を作らないにもかかわらず、2015年は出荷ベースで148億個のチップに採用されています。これはあのインテルの40倍に相当する数です。すでにARMは世界の半導体市場を裏で支配しているのです。

 

また、ロイヤリティモデルのため、ARMアーキテクチャを使用する会社の設計思想や販売量などを世界のどの調査会社よりも正確に、リアルタイムで把握しています。これもARMの強みで、情報力が圧倒的な競争力の源泉となっています。

 

様々なものが通信機能で繋がるIoT(Internet of Things)の時代の加速が現実味を帯びる中、ソフトバンクはなぜこのような高成長分野のガリバーを買収できたのでしょうか。決算説明会で孫社長は、ソフトバンクが通信会社であったためと表現しました。世界の半導体大手は独占禁止法上、ARMの買収が困難だったため、一見シナジーのない「通信キャリア」であるソフトバンクがM&Aできたのです。

 

以前当コラムで書いたとおり、ソフトバンクは今は『通信キャリア』の売上が多いのですが、経営理念の「情報革命」を通じて人類と社会に貢献していこうとする会社です。古くは、ジフデービス、コムデックス、日本テレコム、ボーダフォン日本法人、そしてスプリントと製品をつくらないサービス産業の会社を買収してきました。

 

さて、今回のM&Aでは、これまでの買収と違いが二つあります。一つは、製造業(に近い)会社を買ったこと、そして無理な借金を背景としたM&Aでないことです。今回初めてソフトバンクモバイルのフリーキャッシュフローが開示されましたが、約5,000億円とのことです。安定した通信キャリアビジネスからのキャッシュフローがあるからこそ、夢の実現に3兆円を超えるのれんが発生する買収ができたのです。

 

数年前のソフトバンクの議論では、数百億円の減損の可能性が株価に与える影響を話し合っていましたが、今や兆円単位ののれんの話をしています。2年で倍どころか一桁変わる規模となり、株価は上下に大きく動いていますが、数値面では着実にすべてが大きくなっています。そんな孫社長のIoTという夢をARM買収でより深く考えさせられました。

 

よくリサーチすると、中小型株の中にも、実現はまだですが、将来爆発的に需要が増えそうな技術に取り組む企業があります。ARMのような設計に注力する会社、エッジ(チップの埋め込まれた製品)との接続の簡便化に注力するソフト会社、エッジに電力供給する効率的な電池を作る会社、低消費電力の通信モジュールを研究する会社などです。孫社長の夢を信じれば、中小型株でも飛躍できる会社はたくさんありそうです。

 


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