スマートフォン相場の終焉

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2016/11/28

株式運用第一部

上石卓矢

 

※このレポートでは、日本株ファンドマネージャーが注目しているトピックなどを毎週お届けします。

 

iPhoneが2007年に初めて発売されて以降、スマートフォンは世界中で急速に普及しました。これに伴い、関連企業の株価も大きく上昇しました。例えば、世界の時価総額トップ10企業を比較すると、2006年末時点ではスマートフォン関連企業はひとつもありませんでしたが、2016年9月末時点では10社中5社が関連企業となっています。iOSとAndroidでプラットフォームを握るアップルとアルファベット、Eコマースのアマゾンとアリババ、そしてSNSのフェイスブックという具合です。

 

しかし最近の株価上昇局面において、上述の企業の株価は軟調に推移しています。また、日本においても、ゲームやネット広告といったスマートフォン関連企業では足元で業績未達が目立ち、株価が急落する企業が増えています。

 

こうした企業の株価下落は、スマートフォンの出荷台数鈍化によって、スマートフォン相場が終焉を迎えたため発生した、というのが私の仮説です。

世界の時価総額TOP10企業

 

2007年以降、リーマンショックなどで景気が低迷した時でさえも、スマートフォンの出荷台数は毎年2桁増で成長しました。その結果、2015年の世界の年間出荷台数は14億台を超え、スマートフォンの販売だけでも推定50兆円以上の巨大な市場となりました。スマートフォン市場の拡大によって、様々な業界が恩恵を受けました。

 

例えば、ハードウェアの面では、半導体、ディスプレイ、カメラ、電子部品などの電機精密企業が利益を享受しました。その結果、半導体部材や液晶部材など素材化学でも需要が拡大した他、半導体製造装置や加工組立用ロボットなど機械への投資も進みました。コンテンツの面では、Eコマース、ゲーム、SNS、動画・音楽・電子書籍配信、といった新たなサービスが誕生しました。これにより、ネット広告やサーバーの需要が増加した他、Eコマースの進展に伴い決済や物流インフラへの投資が増えました。さらに、フィーチャーフォン(ガラケー)からスマートフォンへの移行によって通信業界ではユーザー1人当たりの料金が伸びました。このようにスマートフォンの成長は広範な企業の業績拡大をもたらしており、ここ数年の世界の株価上昇局面はスマートフォン相場と呼んでも差し支えのないものだったと思います。

 

ところが、2桁成長を続けてきたスマートフォンの出荷台数は、2016年上期にはゼロ成長まで落ち込んでおり、スマートフォン相場を支えてきた屋台骨が崩れつつあります。今後は出荷台数の伸びが鈍化し、限られたパイを巡る競争激化によって、これまでスマートフォンの成長で恩恵を受けた企業の売上高成長率や利益率が低下する可能性があります。業績鈍化から、関連銘柄のバリュエーションは過去平均を下回る水準まで調整するかもしれません。

 

ただし、このようなトレンドが変わる環境はアクティブ運用にとって有利な局面です。株価指数に追随するパッシブ運用とは異なり、スマートフォン関連の高い成長期待を反映した割高な銘柄を保有しなくてよいためです。こうした銘柄にスポットライトが当たっていた裏側で、オールドエコノミーと呼ばれる業種の中には事業構造を変革しつつある割安な企業がたくさんあります。2000年のITバブル崩壊時と同様、スマートフォン相場の次は、オールドエコノミーの復活が注目されると見ています。

 


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