中期経営計画のKPIと株価パフォーマンスの関係 ~EPSが主要目標の企業は買い!~

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2017/1/23

株式運用第一部

上石  卓矢

※このレポートでは、日本株ファンドマネージャーが注目しているトピックなどを毎週お届けします。

 

日本の大半の上場企業は中期経営計画を策定しています。その際、めざす企業像を明文化するとともに、定量的なKPI(重要業績評価指標)を設定していますが、その内容は企業ごとに千差万別です。

例えば、同じ電子部品業界でも、村田製作所のKPI(売上高・営業利益率・新製品売上比率)と、TDKのKPI(TVAという独自付加価値指標・二酸化炭素排出量)は異なります。KPIが違えば、業績や株価にも影響するはずですが、KPIと株価の関係は意外と知られていません。我々はどのKPIを採用する企業に投資をするべきなのでしょうか。結論から言えば、中期経営計画でEPSが主要目標の企業は買い、というのが私の考えです。その理由を三つご紹介します。

 

【日経平均採用企業の中期経営計画KPI毎のトータルリターン(2013年末-2016年末)】

日経平均採用企業の中期経営計画KPI毎のトータルリターン

※集計対象は日経平均採用企業のうち、3年間トータルリターンのデータがある企業 

※中期経営計画資料の中で、特に強調されており、定量目標を伴う指標をKPIとして集計 

※金融機関の業務粗利益は売上、業務純益は営業利益で集計、普通株等Tier1比率は集計せず 

(出所)各種資料をもとに大和住銀投信投資顧問作成

 

 

第一の理由は、そうした企業の過去の投資リターンが相対的に良好なためです。前頁の表は、日経平均採用企業の中期経営計画KPI毎の過去3年間のトータルリターンを示しています。EPSをKPIとする企業のパフォーマンスは+50.4%と最も好調でした。これは過去5年間でも同様の結果です。純利益をKPIとする企業のトータルリターンが+25.8%と平均の+27.5%に近い水準であることから、継続的な自社株買いの姿勢が好感されたためだと推察されます。

 

なお、EPS以外にも、配当性向・DOE(株主資本配当率)が+38.7%、総還元性向+29.6%など株主還元指標を中期経営計画の『主要』目標とする企業のリターンは高かった一方、中計を発表しない企業が+23.7%、中計に定量目標がない企業が▲5.9%など株主還元に消極的とみられる企業のリターンは相対的に低いものとなっています。

 

第二の理由は、株価バリュエーションへのEPSの影響が大きいためです。日本の投資家は配当利回り、PER、PBRといった3つのバリュエーションをよく使います。配当利回り=EPS×配当性向÷株価、PER=株価÷EPS、であるため、EPSが増加すれば、PERや配当利回りはその分割安になります。また、PBR=株価÷BPS、今年度BPS=前年度BPS+EPS±資本政策による増減±その他の増減、であるため、EPSはBPSひいてはPBRにも影響します。日本の投資家がEV/EBITDA(簡易買収倍率)やFCFイールドといった指標をあまり重視していないと思われる以上、EPSが継続的に増加するかという点が、将来のバリュエーションを考える上では重要だと思います。

 

第三の理由は、EPSが米国株式市場で最も重視される指標であることです。私が欧米株式から日本株式の運用担当者となったとき、最初に不思議に思ったのは、投資家も企業もEPSより営業利益を重視する点です。日本企業のEPSには為替差損益や特損益の影響が大きくでがちという特徴があるものの、営業利益に注目していては、金融収支、持分法損益、少数株主損益、税率、株式数増減、といった株主利益にとって重要な要因を見逃してしまいます。また、営業利益を重視するにも関わらず、EV/EBIT(営業利益倍率)のようなバリュエーション指標を使わないのも不自然です。IFRS導入で日本基準の営業利益の重要性は今後低下していくことが予想され、日本でもEPSの重要性が増していくと見ています。

 

さらに財務安定性に関するKPIを比較すると、有利子負債が+40.7%、ネットD/Eレシオが+36.3%と高いリターンとなる一方、株主資本比率が+18.5%、D/Eレシオが+17.7%と低いリターンにとどまりました。これは、有利子負債やネットD/EレシオをKPIとする企業は、負債の大きい企業が多く、有利子負債削減による財務リスクの低下が好感されたのだと思います。一方、株主資本比率やD/EレシオをKPIとする企業の中には、企業価値の向上よりも財務の安定性を過度に重視する企業もあり、そうした企業のキャッシュや株主資本が余剰な点や、株主還元に消極的な点が嫌気されたのだと思います。

 

このように、一見同じようなKPIを採用する企業でも、株価のパフォーマンスは異なります。みなさんも中期経営計画のKPIに注目してみてはいかがでしょうか。

 

 


■当資料は情報提供を目的として大和住銀投信投資顧問が作成したものであり、 特定の投資信託・生命保険・株式・債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。 ■当資料は各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を 保証するものではありません。 ■当資料に記載されている今後の見通し・コメントは、資料作成時点におけるレポート作成者の 判断に基づくもので、事前の予告なしに将来変更される場合があります。 ■当資料内の運用実績等に関するグラフ、数値等は過去のものであり、将来の運用成果等を 約束するものではありません。 ■当資料内のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。

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