ポイント天国と携帯キャリアの未来

バックナンバーに戻る

2017/3/13

株式運用第一部

永田芳樹

※このレポートでは、日本株ファンドマネージャーが注目しているトピックなどを毎週お届けします。

 

最近、ソフトバンクのY!mobileや、KDDI系のUQモバイルなど、既存の大手キャリア以外の格安通信事業者のテレビコマーシャルをよく見かけるようになりました。そのCMの量は、今が攻め時と言わんばかりに大手キャリアを凌ぐ勢いを感じます。私は昨年後半から日本の携帯電話業界が変革期に入ったと考えています。その前は2010年代前半の3大キャリアのドコモ、au、ソフトバンクのiPhoneの採用競争でした。今回の変革は長年携帯ビジネスの中心であった3大キャリア時代から、MVNOを含めた格安通信事業者が消費者の選択肢に入る時代の始まりです。

 

こう感じるのは、自身が最近auからY!mobileにキャリアの変更をしたからです。その理由はポイントを含めた総合的なコストと、既存キャリアの魅力低下です。auは2年契約を1年消化した程度でしたので、途中解約の違約金や端末費用の一括償却をしましたが、それでもY!mobileに変更する方がコスト的に有利でした。実はY!mobileはMVNOではなく、ソフトバンクが2012年に買収したイー・アクセスの流れをくむ携帯キャリアです。2015年にソフトバンクに吸収合併され一部門となっていますが、名前の通りソフトバンクグループのヤフーを前面にだしたマーケティングを行っています。

 

肝心の月額コストですが端末を自分で用意すれば、電話料金込みで2GB1980円、6GB2980円、14GB4980円(一定の条件を満たした場合。2017年3月現在。)の3本のみです。大手キャリアの場合、複雑な料金体系で普通の人は何にお金を払っているのかわからないことも多いと思いますが、端末コストを除くと大体5GBで7000円を超える程度です。毎月6GB程度の通信を行う私の場合は、Y!mobileに変えることで月々4000円から5000円のコストカットになります。

ただY!mobileで最新のモデルを使おうとすると自分で10万円近くする端末を購入する必要がありますが、こだわらなければ極めて低コストで運用が可能となります。

 

Y!mobileの場合、回線はソフトバンクと共有していますので、通信速度はソフトバンクと同一です。5年ほど前のソフトバンクの回線は他社に劣っていましたが、イー・アクセスの買収とその後の設備投資で今は他社より高速な場合も多くなりました。

 

値段に関しては他の格安通信事業者より安いとはいえません。ただ強みはソフトバンクとヤフーを使ったサービスの広がりです。3大キャリアの1つであるドコモがiPhoneを販売するようになり、ポイント戦略が重要な差別化要因となっています。ドコモはdポイント、auはauウォレット、ソフトバンクはTポイントをポイントプログラムとして採用しています。この中で多様性が抜きんでているのがソフトバンクです。もともとTポイントは日本では最大規模のポイントサービスです。そこにソフトバンクとヤフーのポイントを統合しました。その結果、ソフトバンクとY!mobileの携帯ユーザーは、Eコマースに多くの販促を投入するヤフーのショッピングポイントをダイレクトに受け取れるようになりました。他のキャリアのサービスでは、主力はdポイントやauウォレットといったキャリア自身がコストをかけるポイント販促が中心です。ところがソフトバンクとY!mobileは、キャリア自身だけでなくヤフーショッピングからもメリットを受けることができます。ヤフーはインターネット広告から収益をあげ、それをショッピングの販促に投入しています。実はこの構造は、楽天のポイント販促の仕組みに似ています。ヤフーはショッピング単体では赤字です。ただ広告関連で分厚い収益があるので他社でまねのできない販促を行うことができるのです。

 

またソフトバンクグループの戦略として、Y!mobileユーザーに極めて多くのショッピングポイントを付与し始めています。イメージとしてはY!mobileユーザーがヤフーサイトでショッピングすると、最低15%分のポイント還元、多い場合は30%還元のサービスを恒常的に受けることができるのです。この理由はヤフーが自社のショッピングサイトの顧客や流通総額を増やすために、意図的

にソフトバンクとY!mobileの携帯ユーザーに手厚い販促を行っているからです。ユーザーを絞りながら高水準のポイントを付与することで効率的に優良顧客を増やし、収益の増加を目指しています。

 

このことは今後の携帯キャリアの株価に大きな示唆を与えます。これまでスマホユーザーの増加とそれに伴う通信ARPUの上昇で、3大キャリアの利益水準と株価は大きく上昇してきました。直近では総務省による端末の廉価販売の規制で販促費が減り、さらに利益水準が上昇しました。ところが株価は3社とも冴えません。実はY!mobileやUQモバイル、その他MVNOへのMNPが増加しており、将来的な収益の頭打ちを株価が織り込み始めたのです。まさにこの変化に気付いた合理的な人から、Y!mobile等の格安系へのシフトが始まったのです。

 

ヤフーの業績が順調になればなるほど、Y!mobileユーザーへのポイントは増加し、大手キャリアの成熟化が進みそうです。

 

 


■当資料は情報提供を目的として大和住銀投信投資顧問が作成したものであり、 特定の投資信託・生命保険・株式・債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。 ■当資料は各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を 保証するものではありません。 ■当資料に記載されている今後の見通し・コメントは、資料作成時点におけるレポート作成者の 判断に基づくもので、事前の予告なしに将来変更される場合があります。 ■当資料内の運用実績等に関するグラフ、数値等は過去のものであり、将来の運用成果等を 約束するものではありません。 ■当資料内のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。

PICKUPコンテンツ