世帯数減少に注目~生産年齢人口減少や総人口減少に次ぐ人口動態のトレンド~

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2017/6/5

株式運用第一部

上石 卓矢

 

※このレポートでは、日本株ファンドマネージャーが注目しているトピックなどを毎週お届けします。

 

ニュースで人手不足が話題となっています。私が人手不足を最初に実感したのは2005年頃であり、中小IT企業で働く父の「採用面接に来る人のレベルが年々落ちている。これまで優秀な人が多かった地方国立大学経由での採用が難しくなった。」という発言がきっかけでした。日本の生産年齢人口(15-64歳人口)が1995年にピークアウトして以降、2000年代には上述のように中小企業で人手不足が問題となり、2010年代の今では大企業でも深刻な経営課題となっています。

 

2010年には総人口がピークアウトし、人口減少による消費への影響が懸念されたことなどから、2010年7月1日に中国人向けの個人観光ビザ発給要件が大きく緩和されました。インバウンドの始まりです。その後、2010年から2016年にかけて訪日外国人観光客数は約3倍となり、新たな市場として注目されるようになりました。インバウンド施策を積極的に採用する企業も増えてきています。

 

生産年齢人口・総人口・世帯数の推移

 

 

このように人口動態(出生・死亡・移動による人口変化)は企業経営の大きなトレンドを形成してきました。目まぐるしく移り変わるIT業界のテーマとは異なり、人口動態のトレンドは長期にわたるため、次の人口動態のトレンドを発見できれば、中長期的な成長企業を見つけるうえで大きな手掛かりとなります。

 

私が注目する次の人口動態のトレンドは『世帯数減少』です。国立社会保障・人口問題研究所の2013年世帯本推計によれば、2019年に世帯数がピークアウトする見込みです。これまで総人口減少にもかかわらず、消費の減少があまり話題にならなかったのは、単独世帯の増加を主因として世帯数が増加したためです。消費には携帯電話のように1人1台必要なものと、洗濯機のように1世帯1台必要なものがあります。世帯数連動の消費品目は意外と多く、住宅関連(住居・住設機器・家電・住宅ローン・ペット・DIY工具・ガーデニング用品)、自動車関連(自動車・自動車保険・カー用品・ガソリン)、通信(固定インターネット回線・定額動画配信サービス)など、例を挙げればきりがありません。国内売上比率の高いトイレタリー企業の方と中長期成長率の話をすると、「人口は減っても世帯数は伸びるので2020年までは業績も大丈夫だろう」という回答が多いのですが、世帯数が減少に転じれば大半の企業の国内販売数量が減少し、従来の企業経営だと「大丈夫」ではなくなると考えます。

 

 

世帯数減少下では、どういう企業に投資をするべきでしょうか。値上げができる企業、海外に販売できる企業、他の成長産業に転身できる企業、という当たり前の回答を除くと、3つの選択肢があると思います。

第1に外国人長期居住者を顧客とする企業です。インバウンドでは訪日外国人観光客が注目されましたが、今後はそれより購買頻度の高い訪日外国人居住者が注目されると思います。学生減少・空き家・人手不足などが深刻になるにつれて、海外からの人口流入増加が予想されるためです。

第2に今後増える世帯を顧客とする企業です。総世帯数がピークアウトしても、単独世帯、ひとり親と子世帯などは増加する見込みです。また、日本は婚外子や同棲の比率が海外より低いのですが、今後こうした世帯も増える可能性があります。

第3に有終の美を飾る企業です。内需関連でどう経営しても売上低下が見込まれる事業の場合、事業を売却して他の企業と一緒になったり、財団などに事業を移管してサービスを継続したり、総還元性向を100%以上にして株主資本を減らす、というのも立派な経営の選択肢になると見ています。

 

 


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