日本の“人工知能”を見極める

バックナンバーに戻る

2017/6/12

株式運用第一部

永田 芳樹

 

※このレポートでは、日本株ファンドマネージャーが注目しているトピックなどを毎週お届けします。

 

最近、新聞を読んでいると「人工知能」や「AI」という単語を見ない日はありません。今年に入ってますます目にするようになりました。私が通常、投資判断を行う場合、あまりにも頻繁に取り上げられていると、そのテーマのブームは既にピークを迎えていると考え、遠ざかろうとします。ただ、本当に長期にわたって取り上げられるテーマは2~3年では終わりません。そこで日本経済新聞のWebサイトの検索機能を使って、「人工知能」という言葉が使われた記事の件数の変化を調べてみました。

ワード人工知能が使われた記事件数

2010年は、年間でわずか19件でした。それが2015年に500件と急激に増加し始め、今年は6月までで既に1,577件と、昨年1年間を越えようとしています。特に今年1月から急激に伸びはじめ、まだまだ加速しそうな勢いです。

記事の中身を見てみると、2011年頃の数少ない「人工知能」は、IBMのワトソンと、appleのiPhoneに搭載されたSiriに関するものでした。ただ意外なことに日本企業が人工知能に取り組む記事が多く見られました。JFEの子会社が自社開発のAIで熱空調を効率化する、日本のベンチャーが病院の省エネを自社AIで実現する、など海外企業にも引けを取りません。

2012年は、Siri対グーグルなどの記事が多いのですが、日本企業についても画像診断など難易度の高そうなAIの記事も多く見られます。

2013年になると自動運転車関連のAI記事が目につくようになります。またビックデータと人工知能を結ぶ記事も増えはじめ、ワトソンの実用化の記事も紙面をにぎわせます。

2014年になるとグーグルやapple、IBM、アマゾンといった海外勢に関する記事の割合が増え、IoTや第4次産業革命とAIを結びつける記事が目につくようになります。日本勢ではソフトバンクが目立ち、ロボットのペッパーやAI関連の記事が多く配信されました。

2015年は日本企業が本格的にAI活用に取り組み始めた年です。トヨタなど大手企業もAI活用に取り組み、成果をあげ始めます。またAIのブレークスルーとしてディープラーニングが記事でも取り上げられことが多くなりました。

2016年以降になると、猫も杓子もAIとなります。それまで出遅れていた日本の金融関連のAI記事が増える一方、IoTやビックデータの重要性が、ますます注目されます。また日本企業がAIへの数百億円単位の投資を始めるという記事が目立ちはじめました。

 

このように2010年以降のAIの流れを見ていくと、いくつか特徴が浮き上がります。まず2010年頃から日本企業が過去の経験を投入しながら、独自にAIの開発を行い活用しました。ただ2014年ごろには、高度な開発力と潤沢な予算を誇るグーグルやIBM等の米国勢が、AIのアルゴリズムなど開発の分野で圧倒的なプレゼンスを確立し、その他の会社はそれをうまく活用することが重要となります。そして2015年以降日本勢は、多くの企業がAIの活用に積極的に取り組み始めます。

 

株式に大きく影響を与える業績寄与で考えると、AIを開発し供給することで付加価値拡大ができる日本企業は多くありません。ただAIを活用することで効率化が可能な企業はかなり多いと思われます。日本企業の強みは、経営陣がAI活用の必要性を認識すれば徹底的に模索するところです。期待される領域は、業務効率化、マーケティング戦略、サービス品質の向上などです。そして今後期待されるのが、生産性の向上です。工場ではビッグデータやIoTなどが粛々と導入されてきましたが、さらにAIと一体になることでこれまで以上に競争力の優劣に影響していきそうです。多くの日本企業がAIに本気で投資を始めて、2~3年しか経っておらず、人手不足や国民性を勘案すると、今後思いのほか利益率とシェア拡大が見られる会社が増える可能性が高まっており、銘柄選択の判断材料となりそうです。

 

 


■当資料は情報提供を目的として大和住銀投信投資顧問が作成したものであり、 特定の投資信託・生命保険・株式・債券等の売買を推奨・勧誘するものではありません。 ■当資料は各種の信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を 保証するものではありません。 ■当資料に記載されている今後の見通し・コメントは、資料作成時点におけるレポート作成者の 判断に基づくもので、事前の予告なしに将来変更される場合があります。 ■当資料内の運用実績等に関するグラフ、数値等は過去のものであり、将来の運用成果等を 約束するものではありません。 ■当資料内のいかなる内容も、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。

PICKUPコンテンツ