IoTや世代論に騙されるな。変わるのは流通だ!

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2017/9/4

株式運用第一部

上石 卓矢

 

※このレポートでは、日本株ファンドマネージャーが注目しているトピックなどを毎週お届けします。

 

『IoT』や『若者のXX離れ』という言葉が流行っています。ITによる変化を描写する際、製品や製造工程に注目したのが『IoT』で、消費者に注目したのが『若者のXX離れ』だと私は解釈しています。しかし、日々取材をしていても、『IoT』や『若者のXX離れ』によって、最近業績が大きく変化した企業には出会ったことがありません。つまり、企業が良い商品を提供し、それを消費者が消費する、という点は何も変わっていないのです。

 

ITによって急速に変化しているのは流通です。私は『e-distribution』とでもいうべき流通の変化こそが、今後の企業業績を大きく揺るがすと考えています。

 

米国では、アマゾンによって既存の流通企業の業績が大きく悪化しており、アマゾン・エフェクトという言葉まで誕生しています。そうした企業の株価は大きく下落し、100店以上の店舗閉鎖計画も相次いでいます。アマゾンの影響は百貨店やスーパーにとどまらず、産業資材大手のWWグレインジャー(米国の優良企業)にも及んでおり、同社もアマゾンとの競争から値下げや2桁減益を余儀なくされています。

 

日本では、最近私が取材した企業の2割以上がアマゾンについて話すようになりました。今までは、Eコマース、光ファイバー、といったアマゾンと関係の深い業種の企業だけでしたが、アマゾン内で商品やコンテンツを販売する企業もアマゾンについて語るように変化しています。いよいよ日本でも流通業界における変化が企業業績に影響を及ぼしてくるぞという雰囲気です。

 

また、私の先月の支出を調べてみても、支出額の約30%がオンライン経由での購入でした。食品や日用品で買えるものが増えている他、出前・高速バス・レストランなどサービス領域でも新しいアプリを使うようになり、毎年オンラインでの購入比率が上昇しています。

 

このように流通が変化する中で、投資先企業への影響をどう見極めればよいのでしょうか。彼を知り、己を知れば、ということで、アマゾンや『e-distribution』の特徴を理解し、投資先企業の決算や取材を通じてモニターしていく、という方法が王道だと思います。

 

アマゾンとはどういう存在でしょうか。創業者のジェフ・ベゾスのインタビュー記事*によれば、アマゾンが重視しているのは「商品セレクション、発送のスピード、低価格」であり、アマゾンは「大きな顧客ベースに低マージンで提供したい」という理念を持つ会社です。そのため、アマゾンが伸びると、基本的には関連企業のチャネルミックスは悪化する傾向にあります。

 

『e-distribution』にはどのような特徴があるでしょうか。市場が大きく拡大するのは、在庫システムが整備されるときです。これによって品揃えと発送スピードが改善するためで、航空券やホテルのオンライン予約が増える前には在庫システムに動きがありました。その後は利用者増で各社が成長しますが、やがて利用者数の伸びが頭打ちになる成熟期が訪れます。この時期

には1人当たり売上をどう伸ばすかが重要となります。また、オンライン上で売れやすい商品としては、ロングテールが有名ですが、検索の容易さと品質の信頼度から『型番商品』、店頭よりも商品を説明する機会が多いことから『説明商品』、などもオンライン販売に適しています。

 

こうした基本的な特徴を理解した上で、決算毎に投資先企業に取材をします。何故ならアマゾンは国や企業毎に異なる取引条件を適用し、かつ頻繁に取引条件を変えるため、トップダウンでの投資が難しいためです。例えば同じ文具業界でも、以下のようにチャネル戦略やアマゾンへの対応が異なります。

 

チャネル戦略

 

 

*参考文献:スティーブン・レビー(2012)『CEO OF THE INTERNET ジェフ・ベゾス、かく語りき(WIRED Single Stories 010)』コンデナスト・ジャパン社

 


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