衣料品専門店は投資に値するか

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2017/10/2

株式運用第一部

永田 芳樹

 

※このレポートでは、日本株ファンドマネージャーが注目しているトピックなどを毎週お届けします。

 

日本のアパレル市場はバブル期以降、大きな変化がありました。百貨店の売上の大幅減少、イトーヨーカドーに代表される総合スーパーのアパレル部門の成長と衰退、衣料品専門店チェーンの成長と大規模化、ネット販売の急成長と、産業の規模を考えるとわずか20年の中でもメインプレーヤーの交代が何度も起こりました。

一方、総務省の家計調査によると、2000年ごろは1か月あたりの被服及び履物の世帯支出が1.5万円程度あったものが、直近は1万円前後まで落ちてきています。衣料品の消費者物価指数は2004年ごろをボトムに緩やかに上昇していることを考えると、そもそも買う服の数が以前より大きく減っていることがわかります。

このような厳しい環境の中、現在の勝ち組となっているのが、ユニクロを代表とする衣料品専門店です。

上場衣料品専門店の月次既存店売上高

専門店の上場企業は、毎月月次売上を発表しており、上のグラフは日本を代表するカジュアル系上場衣料品専門店の月次既存店売上高を表したグラフです。これは2008年9月から2009年8月までの売上高を100%とした時、8年後の2016年9月から2017年8月までの各月の売上高を比率で示しています。例えばアダストリアの9月の82.8%という数字は、2008年9月対比の2016年9月の既存店売上高で、2割近く売り上げが落ち込んでいることを示します。各月でばらつきがありますが、この8年間ではユニクロとユナイテッドアローズは人気が衰えない一方、アダストリアやジーンズ系に強いライトオンは苦戦していることが読み取れます。

 

また下の表は2008年から2017年までの月次売上の各社の相関係数です。ユニクロは全体的に他社との相関が小さく、他社の売上動向と無相関な動きをしています。一方、アダストリアとユナイテッドアローズは相関が高く、月次売上が同じ方向に動くことが多いことがわかります。

 

各社

 

アパレルの売上は、気候に大きく左右されます。月次売上が発表されると株価が毎月反応するなど、株式市場も天候に注目しています。ただ長期で見ると企業力の方が大きく影響します。ライトオンよりユニクロの方がここ8年を見ればトレンドをとらえており、経営もうまくいきました。近い商品を扱っているユナイテッドアローズとアダストリアを比べると、前ページのグラフのように8年前より既存店売上を増やしているユナイテッドアローズの方がうまく経営してきたといえます。

 

ただこのセクターの問題点は国内の人口の減少以上に、市場が縮小してきたことです。20年前は衣服にお金をかけることが若者の最優先であり、他者との差別化のキーでした。しかし、スマートフォンが生活の中心になりつつある現代では、ブランド物の衣服にお金をかけなくてもそこそこおしゃれができる上に、食べ物や景色の写真を撮ってインスタグラムなどのSNSにアップするなど、人との違いはファッションだけでないことに消費者は気付いてしまったのです。この点から、衣料品専門店株への投資は、長期投資はあきらめて、短期の既存店の上下の鞘取りに終始することがよさそうです。

 

ただ衣料品業界すべてが後退しているとはいえないかもしれません。例えば下着の売上です。グンゼの下着の売上は2014年をボトムに増加に転じています。業界の淘汰が進んだことに加え、訪日外国人が日本製の下着の良さに気づき、購入しはじめました。

また長年、同業のライトオン以上に売上が低迷してきたジーンズメイトは、ライザップに買収されたことで店舗投資ができるようになり、既存店売上がライトオンと異なる方向に動きだしました。

 

アパレルは移ろい易い消費者の好みを相手にしています。身近な衣料品株も、久々に大転換が近づいているかもしれません。

 


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