相性が良いESG投資と日本の小型株

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2017/10/23

株式運用第一部

永田 芳樹

 

※このレポートでは、日本株ファンドマネージャーが注目しているトピックなどを毎週お届けします。

 

 

先週、米国の機関投資家と面談をしてきました。7年ほど前から毎年様々な米国の投資家を訪問しているので変化も肌で感じるのですが、今年は特にESG(環境・社会・企業統治)への関心が高まっていると感じました。先日も日経新聞にESG投資の記事が掲載されていましたが、既に約23兆ドルもの投資残高があるそうで、もはや小型株のアクティブ運用でも無視するわけにはいかなくなってきました。

 

ESG投資では非財務情報を重要視します。大型株は歴史のある会社も多く、一般的にESGを組織的に対応しています。一方、小型株では組織が小さく大型株よりはESGへの対応は劣ります。また設立から日の浅い企業も多く、ESGより会社の売上、利益成長に注力していることも多い傾向があります。

 

投資家が流動性の乏しい小型株を買う理由は、うまく探せば成長力のある企業が多いからです。利益成長力が高ければ、投資リターンは大型株以上に期待できます。このような投資家が多いということは、小型株の株価は大型株以上に成長力に依存したものということができます。

 

それでは小型株は、ESG投資が向かないということなのでしょうか?

実は私は小型株こそESG投資に向いているのではないかと、最近感じています。その理由は、投資家と企業経営者との“距離”と“コミュニケーションの頻度”です。私は任天堂、ソフトバンク、JTといった大型株の担当も8年間担当し、小型株は11年以上担当しています。そのため日本の株式市場で、両者の違いをよく理解しております。大型株と小型株の投資家と経営陣との距離は大きな差があると感じています。

 

小型株では経営陣に取材するのが基本ですが、大型株ではまれなことであり、取材形式も複数社と共同であったりします。また株式を保有し真剣に対峙すれば、小型株なら四半期ごとの取材も可能です。継続的に経営陣と対話できることは本質的な企業の変化を知るのに、大変重要です。また取材を通して、企業側に変化を促すこともあります。小型株では、企業側から逆に経営について相談を受けることもあります。このように、小型株投資を真剣に行えば単なるスコアリングによるESG投資より、各段に深く会社と対話ができる可能性があります。

 

小型株においてESG投資を考える際の大きな問題点は、その重要性に対する意識の高さです。コーポレートガバナンス報告書が提出されるようになりましたが、ESGに対して本気で取り組んでいる企業はまだまだ限られています。ただESG投資の観点からは、これは逆に大きな可能性があるといえます。変化する余地が大きく、変化させることもできるからです。

 

小型株がESG投資に向いている点は、大型株では考えられないほど、どこまでもその会社を深く知ることができることだと思います。そして組織が小さい分、社長などがグリップできる範囲が極めて大きく、マネジメントが本気になれば短期間で企業風土を変えることができます。

 

特に変化が期待されるのは、「社会(S)」と「企業統治(G)」です。日本は人手不足が深刻になっています。女性活用と労働環境の改善は、社会的な背景から待ったなしです。日本人は経営が安定し大きい企業を好む傾向が強く、相対的に大型株より小型株の方が採用環境は厳しくなることが予想されます。このため必然的に小型株の方がSの改善が期待されます。

 

また日本の小型株の特徴として経営陣が大株主であることが挙げられます。ESG投資がますます広がることで、今後経営陣の意識が高まることが予想されます。また機関投資家もガバナンスをより重視していきます。経営陣に大株主が多いことで、企業価値を高めるためにもガバナンスの強化を実践しそれをアピールしていく企業が増えていくと思われます。その変化幅を考えると、株価に影響を与えるほどの変化は小型株こそ期待できます。日本の企業は海外の企業以上に横目で他社を見ているため、変化が起こり始めると予想以上に早く変わっていくかもしれません。

 

このように考えていくと、まさに公式のないESG投資こそ、伸びしろの大きい日本の小型株は魅力的といえそうです。 

 

 


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