AIが示す経営者交代と企業の大変化

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2017/11/13

株式運用第一部

永田 芳樹

 

※このレポートでは、日本株ファンドマネージャーが注目しているトピックなどを毎週お届けします。

 

長期的に企業が大きく変化する要因は、いくつか考えられます。一つは、個人や従業員の努力で起きたイノベーションです。特に業界の常識にとらわれないような商品やアイデアは、会社を飛躍に導くことがあります。もう一つは新しい社長のリーダシップです。会社を数年で大きく変えることもあります。上場している企業の中でも、歴史のある大企業は意思決定が社長に集中しない仕組みが出来上がっているため、社長が任期中にできることが限られています。ただ経営不振となった日産など、危機に陥るとゴーン氏のようにリーダシップが目に見えて発揮されることも数多くあります。

 

一方、中小型の上場企業では、創業者が会社を長年リードしてきたことも多く、さらに大株主であるがために、成功体験を否定することがなかなかできず、市場変化や経営の失敗への対応が遅れがちになることもあります。一方、変化する際はトップダウンによる急激な動きがみられることがあります。当レポートで2015年5月にご紹介したタカラトミーは、創業家の英断と社長のリーダシップが企業を大きく変えた例です。

 

タカラトミーは2011年に社運をかけて買収した米国の中堅玩具会社RC2の業績不振から、数年で誰の目にも買収の失敗が明らかになってきました。会社を支えるはずの国内玩具部門も経営資源を海外に割いたため、じり貧に陥りました。普通の小型株だと復活することはなかなか難しいことが多いのですが、創業家である当時の富山社長が2014年、オランダ人で日本コカ・コーラの副社長であったメイ氏をCOOに迎え入れました。2015年に社長として崖っぷちの会社の全権を託されたメイ氏は、まさにすべてを変えました。2014年の入社から半年で管理職の平均年齢を5歳若返らせる人事改革、部門数の2割削減、単発のヒットにとどまりがちな商品開発の革新、宣伝方法の多様化など、今までのタカラトミー内部からでは出てこない施策を矢継ぎ早に導入しました。

 

たった3年前ですが、当時この会社をカバーするセルサイドアナリストは一人もいませんでした。そんな中、私はこの大きな変化に注目し頻度を上げて四半期ごとに本社訪問をしていましたが、会社全体の雰囲気や新商品の販売数が1年もしないうち大きく変化してきました。この変化が私の運用商品で導入している人工知能「KIBIT」のスコアにも表れています。

 

実はAIのスコアは社長交代があった2015年の春から、急激に上昇しています。これはAIが会社の開示資料などの雰囲気の変化を捉えているからだと考えられます。株価はAIのスコアの半年から1年後、本格上昇に転じています。これは当時取材をしていたのでわかるのですが、株式市場の多くのプレーヤーは四半期業績に変化が表れて初めて投資を開始するからです。会社自身が発表している定性情報も、信頼を得るには数字が必要なことを物語っています。このようなことから、地道なリサーチによって会社の業績に変化が出る前に会社の大きな変化を捉えると、大きなリターンが得ることができると感じます。

 

そんなタカラトミーですが、先週メイ社長の辞任と小島副社長の社長の就任が発表されました。さらに同社の好業績も同時に発表されたにも関わらず、株価は10%以上急落しました。メイ氏の手腕に市場がどれほど期待していたのかわかります。

 

ただこれは新たなる変化として逆に投資チャンスではないかと、私は感じています。市場は小島副社長が三菱商事系の丸の内キャピタルという投資会社出身であることから、玩具会社のトップとしての手腕に懸念を抱いている可能性を感じますが、実は小島氏は改革をメイ氏とともに実現してきた心も体もタカラトミーの人材です。私も2年前小島氏にお話しを伺ったことがあるのですが、丸の内キャピタルがタカラトミーから手を引いたとしても、今後もタカラトミーの立て直しに情熱を注ぐし、タカラトミーに骨を埋める決意だということでした。

 

先ほどのAIのスコアを見ると、市場が当社を注目し出した2016年にピークをつけています。その後のスコアの下落は株価としての魅力が落ちたわけではなく、ある意味業績とともに株価が上昇する普通の会社になってきたことを表しています。KIBITは「変化を捉える」ようにチューニングされた人工知能であるため、このような通常状態では、過去の平均に戻っていくことが予想されます。ただ今回の社長交代でこの平均回帰の流れが反転する可能性を感じます。その時、株価はさらなるバリュエーションの切りあがりを伴った、大相場になっているかもしれません。

 

タカラトミーの株価とAIスコアの推移

 


 

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