ESG投資で大事なこと~収益・日本の課題・客観性~

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2018/5/15

株式運用第一部

上石 卓矢

 

※このレポートでは、日本株ファンドマネージャーが注目しているトピックなどを毎週お届けします。

 

はじめに

学生の就職活動が本格化しています。私が10年前に就職活動をしたときは、すべての会社の志望動機に「日本の発展に貢献したい」と書きました。というのは、私が通っていた大学のあらゆる授業で教授が日本の将来を危惧していたからです。就職活動中には150社以上の話を聞きましたが、どこで働けば日本の発展に貢献できるのか分かりませんでした。そこで、まずは日本の将来に関する情報が一番集まる場所に行こうと思い、日本株運用に強い資産運用会社に入社しました。

 

色々な専門家や経営者の話を聞くにつれて、日本最大の課題は人口問題だと考えるようになりましたが、資産運用会社で社会問題を扱うことは難しく、社外で勉強会や講演会を開催してきました。ところが、ESG(環境・社会・ガバナンス)という大波が資産運用業界に訪れたことで、現在では会社の仕事として社会問題に取り組み、ESG投資がどうあるべきかを考えています。

ESG投資で大事なこと 

私がESG投資で大事だと思うのは、「収益」、「日本の課題」、「客観性」、の3点です。

2007年ごろに環境ファンドが流行りましたが、このブームが終わってしまった一因は、環境が単なるテーマとして扱われ、リターンをどう確保するのかが不明瞭だったためだと考えています。そこでESGファンドを一過性のテーマ型ファンドにしないためには、(1)ESG課題解決に資する本業の利益成長、(2)ボトムアップリサーチと基準株価法による割安株の発掘、(3)エンゲージメントによる企業価値の向上、が大切だと考えています。

ESGファンドというと、外資系格付け会社のレーティングやESGへの取り組みの評価としてSDGs(持続可能な開発目標)の各目標への関与を用いることが多いですが、これだけでは日本の課題が抜け落ちてしまいます。

 

例えば、高齢化の課題として、栄養ニーズ、輸送システム、緑地・公共スペースについてしかSDGsでは言及していません。ところが、日本では高齢化の課題として、社会保障や財政への負荷、社会とのつながりの減少、劣悪な介護サービス、生活保護水準以下で暮らす高齢者の拡大、シルバー民主主義など広範な指摘があります。一方、土地が狭い香港では住居が最大の社会問題となるなど、国によって重要な社会問題は異なっており、SDGsの考え方だけでは不十分です。また、社会的課題に限らずガバナンスについても、米国では高額な経営者報酬が問題である一方、日本では株主視点の経営をどう促すかが問題であり、国により課題が異なります。したがって、日本独自のESG課題をどうやって特定するのか、それが重要でありファンドの個性が出る部分です。

 

ESGファンドに興味を持った場合には…

ESG投資は客観性の確保も大切です。もしファンドマネージャーが極端な社会問題意識を持っていた場合、顧客の望まないESG投資が行われる可能性があります。そのため、ファンドマネージャーの個人的な社会問題意識や政治思想が過度に入り込まないよう、客観的にESG課題を定義する必要があります。

最近の決算では、日本ユニシスや横河電機などが企業理念から事業戦略までESGに十分配慮した素晴らしい中期経営計画を発表しています。このような企業を模範として、ESGを意識した経営や投資が今後ますます増えることでしょう。そうした中で、もしESGファンドに興味を持った場合には、「収益の源泉は?」「日本の課題をどう盛り込んだ?」「客観性をどう確保した?」という3点を意識してみてはいかがでしょうか。

 

 


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