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企業業績のここに注目-利益重視に転じた日本企業

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2018/1/15

経済調査部

部長 門司 総一郎

 

日本企業の業績が好調を続けています。大和証券が各証券会社のアナリストの業績見通しをまとめたデータによれば日本企業の1株当たり利益(EPS)2016年度が13.8%増、17年度も30.3%増と他市場を大きく上回る増益率が見込まれています。

 

18年度は1.2%と減速する見通しですが、この点については17年度に入ってからここまでの好決算を受けてアナリストが17年度の利益水準を大きく上方修正した一方、18年度についてはまだ先であることから小幅の上方修正に止めていることが理由であり、業績悪化を示すものではないと考えています。今後アナリストが18年度の業績の見直しを本格化させるに伴い、18年度の増益率も上方修正されると予想していますが、今回の「市場のここに注目」は日本企業の業績が好調な理由について考えてみます。

 

理由の1つは世界経済の改善です。国際通貨基金(IMF)が昨年10月の世界経済見通しで2017年の世界の経済成長率を3.5%から3.6%に、18年も3.6%から3.7%に上方修正するなど世界経済は改善しています。この世界経済の改善が日本企業の業績好調の理由の1つであることは間違いありません。

 

国・地域ごとの増益率

ただし、世界経済の改善は日本以外の企業にとっても業績の押し上げ要因となるため、日本企業の業績が他市場以上に好調な理由にはなりません。日本企業の業績好調には他にも理由がありそうです。

 

その理由として考えられるのが、日本企業の収益力の向上です。法人企業統計によれば、日本企業の売上高経常利益率はリーマン・ショック後の2009年に2.3%まで低下しましたが、そこから7年連続で上昇、16年には5.2%に達しました。こうした収益力の向上が日本企業の業績好調の理由の1つですが、日本企業はどのようにして収益力を向上させたのでしょうか?

 

日本企業の売上と経常利益の伸びを見ると、リーマン・ショック以降2011年、12年、15年と減収増益の年がいくつもあります。この「減収増益」が日本企業の収益力改善のキーワードです。「減収」といっても日本企業の商品が売れなくなった訳ではありません。経営者が経営目標として売上やシェアよりも利益を重視するようになったことが理由です。

 

日本企業の売上高と経常利益率

 

例えば日立ですが2016年度に保有する日立物流や日立キャピタルの株式を一部売却し、両社を連結対象から外しました。その結果連結売上は減少しましたが、当期利益は増加しています。日立が両社を連結対象から外したのは、金融や物流事業と日立が中核事業と考える社会インフラ事業などの間にシナジーが期待できないと判断したためです。日立はこうした非中核事業を段階的に縮小し、経営資源を中核事業に集中させる方針です。

 

富士通は昨年11月に今期の業績見通しを上方修正し、2000億円の連結営業利益を見込んでいますが、売上は減少する見通しです。これは利益率が低いPCや携帯電話などハードウェア部門を縮小し、利益率の高いITサービス部門にシフトするためです。リーマン・ショック前に最大5兆円あった連結売上高は2019年度には3兆円台後半になる見通しです。

 

リーマン・ショック以前の日本では経営目標として売上やシェアを重視する企業が多かったと思いますが、最近はコーポレートガバナンス強化により、経営目標として自己資本利益率(ROE)が求められるようになったことなどから、利益を重視する企業が増えてきています。これが日本企業の収益力向上の背景です。経営姿勢の変化が好業績を支えていることになります。 

 

逆に業績が改善しない企業の中には売上やシェアを重視したことへの反省を口にする企業もあります。例えば今期6年ぶりとなる最終赤字への転落が見込まれるリコーの山下良則社長は主力の複写機部門で「採算よりシェア拡大を重視した面があった」(日本経済新聞、1111)と語っています。

 

売上・シェア重視の典型だった宅配業界にも変化は押し寄せて来ました。ヤマトホールディングスの10-12月営業利益は、値上げなどにより1年ぶりに黒字になったと111日の日経は報じています。

 

市場参加者の間では、企業業績というと円安や減税などわかりやすい点だけを論じる傾向がありますが、それだけでは現在の日本企業の業績好調は説明できません。企業経営者の姿勢の変化など、一見わかりにくい要因についても、注視することが重要と考えています。

 


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