ブラジルレアルのここに注目!-正念場を迎えたブラジル政治

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2015/12/4

経済調査部 部長 門司 総一郎

 

12月2日、ブラジルのクーニャ下院議長はルセフ大統領に対する弾劾の要求を受理、弾劾手続きが始まることになりました。この決定はブラジル株やブラジルレアルにマイナスに見えますが、市場の反応は逆で、昨日のボベスパ指数は3.3%上昇、レアルも対ドルで2.1%、対円でも1.5%上昇しました。

 

 

ブラジルレアルの推移 ボベスパ指数の推移

 

この背景には現在手詰まり状態に陥っている政治が弾劾審査をきっかけに動き出し、最終的に財政再建が進むのではとの観測があります。今回の「市場のここに注目!」は大統領弾劾の行方と、その市場への影響について検討します。

 

ルセフ氏への弾劾請求は昨年の大統領選での政治資金問題や、財政収支の改ざん疑惑が理由です。弾劾手続きは下院→上院の順に行われ、結論が出るまでに数ヵ月かかる見込みです。ただし大統領解任のためには上下院それぞれで3分の2の議員の賛成が必要とハードルが高く、上下院とも与党が過半数を占めている現状ではルセフ氏が失職する可能性は低いというのが大方の見方です。

 

弾劾請求を受理したクーニャ氏は連立与党の1つである民主運動党に所属していますが、反ルセフ派の旗頭でルセフ氏と対立、財政再建の最大の障害となっています。前述のようにルセフ氏を失職に追い込むのは困難と見られていますが、クーニャ氏はなぜ弾劾要求を受理したのでしょうか?

 

この理由については、自分の保身を図るためとの見方があります。クーニャ氏自身も汚職の嫌疑を受けており、下院の倫理委員会はクーニャ氏の疑惑に対する調査を検討していました。クーニャ氏が弾劾要求を受理したのは、大統領との駆け引きの材料にするためという訳です。

 

ブルームバーグは、12月2日に労働者党(ルセフ氏が所属している)に所属する下院倫理委員会の議員がクーニャ氏への調査開始に賛成票を投じることで合意。その数時間後にクーニャ氏が弾劾要求の受理を表明したと報じています。この話が本当であれば、先ほどの見方が当たっていそうです。

 

ルセフ氏は弾劾については潔白を主張しており、徹底的に争う構えです。これが影響して財政再建の審議がさらに遅れることは考えられますが、市場参加者の間では、現状のまま政府と議会の間でこう着状態が続くよりも、法廷闘争に移行して白黒をはっきりつける方が望ましいとの声が多いようで、それが昨日のブラジル株高、レアル高につながりました。

 

ブラジルの政治は危機的な状況といわれますが、正念場を迎えたといえそうです。ルセフ氏が勝てば財政再建に向けた展望が開けることになりますし、クーニャ氏が勝てばルセフ氏は失職。財政再建は遠のきます。また両者が早期に手打ちして、クーニャ氏は追及を免れる代わりに財政再建に協力するシナリオもありますが、時間的なことを考えればこれがベストシナリオといえます。

 

予断は許しませんが、財政再建への道筋が見えてきたことは現状打破に向けた一歩前進と考えています。今後の弾劾手続きや(おそらく始まるであろう)クーニャ氏の調査の状況に注目です。

 


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