2016年波乱の幕開け-世界同時株安は過剰反応

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2016/1/12

経済調査部 部長 門司 総一郎

 

2016年の世界の株式市場は波乱の幕開けとなりました。日本株は大発会から先週末まで5日連続安、本日も午後130分現在で前日比2%以上の大幅安です。その他の株式市場も大幅下落となっていますが、この世界同時株安の最大の理由は景気・株式・人民元などの中国に対する包括的な不安です。今回の「市場のここに注目!」は中国の状況について分析しつつ、どうすれば世界の株式市場が下げ止まるかについて考えてみます。

 

上海総合指数 人民元の対米ドルレート

 

世界の株式市場が下げ止まるシナリオは2つあります。1つは「中国株式は下げ止まらないが、他の株式市場は下げ止まる」というもの。もう1つは「中国株式が下げ止まることにより、他の株式市場も下げ止まる」というものです。今回は前者について検討し、後者は次回取り上げます。

  

年初から中国株が下落、世界の株式市場が連れ安するパターンが続いていますが、世界の株式市場が中国株に連れ安する理由としていわれるのは「中国株が急落するほど中国経済は悪い。中国経済が悪ければ世界経済も悪くなる。だから世界の株式は下落する」という理屈です。

  

しかし、この理屈には同意できません。足元の中国の経済指標はどちらかといえば安定しつつあるからです。例えば鉱工業生産の前年比伸び率は2013年、14年と低下したものの、153月を境に下げ止まっています。また小売売上の伸びは154月を底に緩やかではあるものの加速しつつあります。こうした指標を見る限り中国経済は悪化しておらず、中国株の下落は経済の悪化を反映したものではないといえるでしょう。

 

中国の鉱工業生産 中国の小売売上

 

中国株の下落は景気の悪化でなく、市場の政府に対する期待感の剥落を反映したものです。昨年の株価下落局面において政府は政策総動員で株価の下落を食い止めましたが、そのため市場には「いざとなれば政府が助けてくれる」との期待感が残りました。この政府への期待感が今年に入って剥落したことが中国株大幅安の背景です。詳しい事情は次回説明しますが、経済への懸念でなく政府への期待剥落が中国株安の理由であれば、先ほどの理屈は成り立ちません。よって中国株安に対する世界株安は投資家の過剰反応ということになります。

  

人民元安についても同様です。「輸出テコ入れのために政府が通貨安誘導しており、中国経済が悪い証拠」といわれますが、人民元安は一昨年秋以降の金融緩和によって生じた余剰資金が米国の利上げなどによってに流出しているためであり、政府が誘導しているためではありません。

  

むしろ人民元安は中国人民銀行の人民元買い介入を通じてこれまでの金融緩和の効果を相殺しかねないこと、足元外貨準備の減少が続いていることなどから、政府は(少なくとも)急速な人民元安を望んでいないとの見方の方が正しいといえます。

  

以上のように、足元の中国経済は悪化している訳ではなく、中国株安に対する世界株安は過剰反応と考えています。よって投資家が冷静を取り戻し、中国経済がそれ程悪くないことを認識することにより、中国株式が不安定な状況を続けたとしても中国以外の株式市場はそれとかい離して回復に向かう可能性があると見ています。これが世界の株式市場が下げ止まる第1のシナリオです。次回はもう1つのシナリオについて検討します。

 

 


 

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