2016年波乱の幕開け-中国株はどうなる!?

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2016/1/15

経済調査部 部長 門司 総一郎

 

前回に続き、中国株などの分析を踏まえて世界の株式市場が下げ止まる条件を考えます。前回は「中国株は下げ止まらないが、他の株式市場は下げ止まる」とのシナリオを検討しましたが、今回は「中国株式が下げ止まることにより、他の株式市場も下げ止まる」とのシナリオについて考えます。

 

まず年初からの中国株安について検討します。前回述べたように、この株安は景気の悪化などによるものでなく、政府への期待感の剥落によるものと考えています。

中国株価指数の動き(日次)

昨年の株価下落局面において政府は政策総動員で株安を食い止めようとしました。その効果により株価は底入れ、年末にかけて回復します。「暴落」のイメージが強い昨年の中国株ですが、年間で上海総合指数は9.4%上昇、深せん総合指数に至っては63%上昇と実はリターンはプラスです。夏場の株価急落にもかかわらず年末にかけて株式市場が持ち直したことから、投資家(特に個人)の間には「最後は政府が何とかしてくれる」との期待感が根強く残りました。

 

市場参加者だけではありません。昨年末にはエコノミストの間で「景気を下支えするため、政府は株価を押し上げる」との声が聞かれました。このようにエコノミストの中にも「政府は株式市場をコントロールできる」との期待感がありました。

 

この期待感は今年に入っていきなり試されることになりました。昨年7月に導入された大株主(発行済み株式の5%以上を保有する株主)の売却禁止解除を1月上旬に控え、需給悪化を恐れる投資家の売りから年初の中国株がいきなり急落したからです。この下落は政府に対策を促すものであり、いわゆる「催促相場」に当たるといえます。

 

政府は早速「今後3ヵ月間は大株主の売却は発行済み株式の1%以内に止める」との新たな規制を打ち出しました。しかし売却禁止の解除自体が先送りされることはなかったため、市場にとって満足できる回答ではなかったようです。その後も中国株は下落を続けました。

 

株価は下落するものの、昨年のように政府が積極的に株安阻止に動く姿勢はほとんど見られません。ここ数日は上海総合指数が3000ポイントを割り込むと反発する動きが見られるので、政府が買い支えしているように見えますが、せいぜいその程度。投資家の政府に対する期待感は大きく低下したと思われます。

 

中国株が反発するには、政府が本格的な株価対策を再開して市場の信頼を取り戻すか、あるいは株価下落を容認して適正な水準まで調整するのを待つかのどちらかになりますが、前者は困難です。

 

上海総合指数は既に昨年8月の安値と同水準まで下落しており、昨年買い支えに参加した政府系金融機関などは評価損を抱えていることになります。そのため新たに大規模な買い支えを開始することは困難と思われます。また大株主の売却禁止や新規上場延期などは企業の経営に支障をきたしかねず長期に続けることはできません。習近平国家主席が進める構造改革の障害となる恐れもあります。

 

人民元に売り圧力がかかっているため、金融緩和による株価支援も封じられています。このように考えて、政府が株価対策を意図しても打つ手がないと見ています。ポイントを定めて介入し、下落ペースを緩和することがせいぜいで、株価の下落を容認せざるを得ないでしょう。

 

これは必ずしも悪いことではありません。昨年同様の大規模な株価対策に踏み切れば、一時的に反発しても数ヵ月後にまた株価が急落する可能性大です。それよりも下落を容認した方が、目先一段安するにしても本格上昇に転じる時期は早いと思われます。

 

目先の一段安もそれ程大きなものにならない可能性があります。昨年末時点の予想PER(株価収益率)は上海総合指数が15.2倍、深せん総合指数が38.4倍ですが、指数の下落率を勘案すると1月14日時点ではPERはそれぞれ12.9倍、30.9倍です。深せんは割高ですが、上海については既に割安、下げ止まっておかしくない水準です。

 

以上を踏まえて、中国株は目先一段安の可能性はあるものの、底入れは近いと考えています。その場合、世界の株式市場も底入れすることになるでしょう。ただし、政府が中途半端に介入して株価を持ち上げることにより、かえって底入れのタイミングが遅れる可能性はあります。このリスクには注意すべきでしょう。

 

 


 

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