2016年波乱の幕開け-株式市場の混乱は収束へ

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2016/1/29

 経済調査部
 部長 門司 総一郎

「波乱の幕開け」の最終回です。世界の株式市場は依然上下に激しい動きを続けていますが、以前のように一方的に下落する状況ではなくなってきました。おそらくここまま上昇に転じると見ていますが、そう考える理由について説明します。

 

そう考える理由の1つは、中国株の底入れが近いと思われることです。前回中国株の底入れについて「(政府が株価対策を実行するよりも)下落を容認した方が、目先一段安するにしても本格上昇に転じる時期は早い」と述べました。

 

その後、中国政府は目立った株価対策を採らず、上海総合指数は一時抵抗ラインとなっていた3000ポイントを割り込み1月27日には2638ポイントまで下落しましたが、これにより中国株はセリング・クライマックスを迎え、上記の「下落を容認」と「一段安」を満たしたと考えています。

上海総合指数(日次)

 

信用買い残も1兆元を割り込みましたが、これは上海総合指数が上昇を始める前の昨年初め、あるいは下落から上昇に転じた10月初めと同じ水準です。以上を踏まえて中国株の底入れは近いと考えています。これが世界の株式市場が上昇に転じると考える第1の理由です。

 

もう1つの理由は市場のリスク・オフの動きが行き過ぎに近いところにきたことを示す指標が増えていることです。例えば、米国の原油先物のネット買い残高(買い建て枚数から売り建て枚数を引いたもの)は2014年6月のピーク49.3万枚から16年1月の17.8万枚まで減少しました。これは2012年12月以来の低水準です。

 

ネット買い残高の減少は弱気の投資家が増えたことを意味するので一見悪いことのように見えますが、その分ポジション解消による売り圧力が低下し、買い余力が増加したことになるので、原油価格は上昇しやすくなります。これは足元のリスク・オフが行き過ぎであり、原油価格の反転が近いことを示す指標と考えてよいでしょう。

米原油先物取引のネット買い残高とWTI先物価格

ドル円についても同じことを示す指標があります。米通貨先物取引のネット円買い残高(対ドルでの円買い建て枚数から売り建て枚数を引いたもの)は今年に入って2012年10月以来となるプラスに転じました。これは円高が既にいいところまできたことを示すものであり、今後少なくともいったんは円安に振れる可能性が高いと考えています。

 

もう1つ紹介させていただくのはBofAメリルリンチ証券が毎月当社を含む世界の機関投資家を対象に実施しているファンドマネージャー調査のデータです。このアンケート調査の中に、株式・債券・不動産・オルタナティブ・商品・現金の6資産について、それぞれを現在オーバーウェイト、アンダーウェイト、あるいは中立のいずれにしているかを問う設問があります。

機関投資家の現金に対するポジション

 

今年1月の調査では「現金アンダーウェイト」との回答は全体の10%、「オーバーウェイト」との回答は49%、両者の差は39%ですが、これは2012年6月以来の高水準であり、多くの投資家がポートフォリオのリスク・レベルを引き下げたことを示しています。

言い換えれば悪材料はかなり市場に織り込まれていると考えられるので、これもリスク・オフがいいところまで来たことを示す指標と判断しています。こうした指標が増えていることが、世界の株式市場が今後上昇に転じると見ている第2の理由です。

 

ところでお気づきになられた方もいらっしゃるでしょうが、ここまで紹介した指標はいずれも「2012年以来の水準」となっています。2012年は欧州債務危機がピークを迎えた年であり、また年末には米国の「財政の崖」が控えていました。

 

また中国経済の先行きには強い不透明感があり、日本は民主党政権の「決められない政治」に苦しんでいた年でもあります。現在の金融市場はこの2012年と同程度の不安要因を織り込んだといえます。

 

2012年の時はこうした問題を何とか乗り越えたことにより、世界の株式市場は13年にかけて大きく上昇しました。今回中国経済や原油安などの問題を乗り越えることができるかどうか分かりませんが、この2012年との類似点を見る限りにおいては、リスク・オフよりもリスク・オンに備えたポジションが望ましいと考えています。

 


 

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