2016年、波乱は続く-リーマン・ショックとの比較

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2016/2/12

経済調査部 部長 門司 総一郎

 

2月になりましたが、世界的なリスク・オフの動きには依然終わりが見えません。リーマン・ショックの再来を懸念する声も増えていますが、今回もこの世界の金融市場の状況について考えます。

 

日米欧株価指数の推移 円/ユーロの対ドルレート

 

日米欧の株式市場は年初から下落したものの、1月下旬に入ってから持ち直しつつありました。これに水を差したのが日本銀行のマイナス金利です。市場は当初この決定に株高・円安で応じましたが短期的なものに終わり、その後は逆に円高・株安が加速しました。

  

マイナス金利の導入が株安・円高をもたらしたのは、日銀が金融緩和の手段をこれまでの資産買い取りによる「量」の緩和からマイナス金利という「金利」の緩和に転換したためです。株式市場や為替市場では上場投資信託(ETF)や国債の買い入れ増額を期待する向きが多かったのですが、何の前触れもなく日銀が金利操作に転じたことが「量的緩和は限界に達した」、「これ以上の資産買い取り増額はない」などの憶測を呼びました。この量的な面での追加緩和への期待感の剥落が、マイナス金利導入以降の株安や円高の主因です。

 

欧州でも株安やユーロ高が進みましたが、これは今回の日銀の決定と市場の反応を見て、日銀同様に追加緩和に積極的な欧州中央銀行(ECB)への期待感が揺らいだためです。逆に量的緩和を終了し、ゼロ金利も解除した米国では元々金融政策への期待感が小さいため日欧に比べて株価下落は小幅、ドルも対円、対ユーロ共に軟調に推移しています。

 

こうした状況の中、市場では「リーマン・ショックの再来」を懸念する声も出いていますが、その可能性は低いと見ています。理由は2つあります。1つはバブルが見当たらないことです。 

 

リーマン・ショックがあれだけの大きな危機になったのは2000年代に入ってからの低金利と長期的な景気拡大の中で投資家のリスク・テイク姿勢が強まり、米住宅バブル、クレジットバブル、商品バブル、新興国バブル、円キャリーバブルなど様々なバブルが発生、それが同時多発的に破裂したためです。特にサブプライムに代表される金融工学を活かしたレバレッジの活用はリーマン・ショックに大きな役割を果たしました。 

 

しかしリーマン・ショック以降世界的に低成長が続いており、現在投資家のリスク・テイク姿勢は弱いままです。こうした中ではバブル発生の可能性は低いといえます。低格付けの社債などにバブルを懸念する声がありますが、リーマン・ショック時のように何重にもレバレッジを効かせたものとは思えません。仮にバブルであり破裂するとしても、局所的なものであり、世界的な危機にはつながらないと見ています。 

 

もう1つは様々な規制により、世界の大手金融機関のリスク・テイクが制限されていることです。リーマン・ショックの時はリーマン・ブラザースを初め、多くの大手金融機関がサブプライム関連の金融商品などでリスク・ポジションを抱えていたため、危機発生後はドミノ的にそうした金融機関が破たん、あるいは救済に追い込まれました。しかし、今回金融機関が元々リスクをとっていないことから、こうした金融危機のリスクは小さいと見ています。以上がリーマン・ショックの再来の可能性は小さいと考える理由です。 

 

最後に今後の見通しについて触れておきます。リスク・オフになかなか歯止めがかかりませんが、前回当コラムで述べたように既にリスク・オフの行き過ぎを示す指標がいくつも出ていることから、底入れの時期は近いと考えています

  

リスク・オンに転じるきっかけとしては、サウジアラビアが態度を軟化することによる産油国の協調減産合意、米連邦準備制度理事会(FRB)の主要メンバーからの今後の利上げに対する慎重な姿勢を示す発言などが考えられるでしょう。なおECBや日銀については、今回の日銀の決定を見る限り、これ以上の追加緩和は逆効果であり、見合わせるべきと考えています。 

 


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