成長戦略のここに注目-「観光立国2.0」

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2016/3/14

経済調査部

部長 門司総一郎

 

 相変わらず株式市場で成長戦略に期待する声はほとんど聞かれませんが、当コラムでは、成長戦略は着実に進展しつつあり、景気や企業業績、株式市場にも好影響を及ぼしていると考えています。今回からしばらく、そうした成長戦略の進捗について見て行きますが、初回は観光立国を取り上げます。

訪日外国人の推移

 観光立国は成長戦略の中で、もっとも進展著しい分野の1つです。2015年の訪日外国人数は前年比47%増の1974万人。「2020年に2000万人」の目標は前倒しでの達成確実と見られています。また2015年の外国人旅行消費支出額は前年比72%増の3.4兆円、個人消費の約1%に相当する金額です。株式市場でも昨年は百貨店やJRなどが外国人観光客増加の恩恵を受ける「インバウンド」銘柄としてが脚光を浴びました。

 

 中国経済の不透明感や足元の円高などから先行きに慎重な見方もありますが、2019年のラグビーワールドカップや2020年の東京五輪など今後ビッグ・イベントを控えていること、また民泊の推進や地方空港の国際線使用料引き下げなど政府が観光立国関連の新たな施策を打ち出していることなどから、一時的に伸び悩むことはあっても基調としての外国人観光客増はまだまだ続くと見ています。

 

 むしろ観光立国に関して注目すべき点は、外国人観光客増の影響が小売や鉄道など直接外国人観光客増の恩恵を受ける分野や企業だけに止まらず、設備投資に波及し始めたことです。

 

 目立つのはホテルなど旅行関係施設への投資です。第二次安倍晋三内閣が発足した2012年は836万人に過ぎなかった訪日外国人数はわずか3年で1974万人まで増加しました。当然ホテル不足が問題になります。既に多くのホテルが新設、あるいは立て直しなどにより拡張されていますが、マリオット・インターナショナルやスターウッドなどの世界的な大手ホテル・チェーンが日本での事業拡張を予定するなど、ホテルへの投資はまだまだ続く見通しです。

 

 観光バスも不足しています。この需要に応えるため、日野自動車などは大型観光バスの増産を開始しましたが、それだけに止まらず生産能力の増強も検討中です。最近の事故で観光バスは安全性の向上も求められていますが、この観点からも旺盛なバス需要は続くと思われます。

 

旅行関連施設への設備投資

 

 「爆買い」といわれる外国人消費も設備投資に波及しつつあります。花王や大王製紙は紙おむつの工場を新設。資生堂は国内では27年ぶりとなる新工場を立ち上げました。

 

 今までインバウンドといえば百貨店やJRなど外国人の旅行や買い物など直接恩恵を受ける企業が対象でした。しかし、今後はこうした設備投資への波及効果なども含めて恩恵を受ける企業が広義のインバウンド銘柄として注目されるべきでしょう。

 

 また昨年10-12月の実質設備投資はエコノミストの予想に反して前期比1.5%のプラス成長となりました。これには上述のホテルなど、インバウンド関連の投資も貢献したと思われます。このようにマクロ面でも観光立国の効果は大きくなってきています。

 

 今までの観光立国を小売や鉄道など直接恩恵を受ける産業、企業を中心とした「観光立国1.0」とすれば、現在は設備投資などを通じて直接は関係ない産業や企業にも恩恵が及ぶ「観光立国2.0」に移行しつつある状況といえます。以上の分析を踏まえて、観光立国は成長戦略で最も進んでいる分野の1つであり、今後も進展が期待される分野と考えています。

 

以上

 


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