成長戦略のここに注目-賃上げ率は3年連続の2%超え

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経済調査部

部長 門司 総一郎

 

賃上げも成長戦略の1つです。今年の賃上げについては、昨年を下回る水準に止まることが確実なことから批判的な報道が目立ちますが、評価できる点もいくつもあります。今回は今年の賃上げのどういった点が評価できるかについて考えてみます

 

連合によれば、会社側回答の第1回集計の賃上げ率は2.08%、昨年の2.43%2.16%を下回るものです。これが今回の賃上げに対して否定的に見る向きの根拠となっています。

春闘 会社側回答 賃上げ率

 

前年の水準を下回ったからといって、それでただちに今年の賃上げが否定されるべきとは思いません。このままの水準で着地すればアベノミクス開始以降の春闘としては3年連続の2%超え、またベースアップ(ベア)3年連続です。これらはアベノミクスの効果として評価すべきでしょう。

 

賃上げ率低下の主因はインフレ率の低下です。組合は賃上げの要求を策定するにあたってインフレの水準を考慮します。これはインフレによる実質賃金の目減りを回避するためです。昨年の1-3月は消費税率引き上げの影響が残っており、消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年比で2%程度上昇していました。しかし今年の1-3月はほぼ横ばい。そのため組合は控えめな要求を出さざるを得なくなり、会社側の回答も低いものとなりました。

 

昨年は消費の弱さが議論された時、一部からは「名目で賃金が増えても実質で増えてないことが理由」との指摘がありました。それが正しいのであれば、今年は逆に名目では増えてなくても実質で増えていることになります。実質ベースが正しいという訳ではありませんが、こうした観点から今年の賃上げを評価することも可能でしょう。

アルバイト/パートの平均時給

 

春闘とは直接関係ありませんが、非正規労働者の賃金は正規労働者以上に上昇しています。リクルートジョブズによれば、三大都市圏の今年2月のアルバイトやパートの平均時給は前年同月比で2.2%の上昇。上昇ペースの加速が続いています。

 

また派遣スタッフの時給は3.7%上昇。1月の4.0%から低下しましたが、3-4%と高い水準の伸びが続いています。非正規労働者の賃金は正規労働者に比べて足元の労働需給に敏感に反応します。したがって高い時給の上昇率は、それだけ足元の労働需給が逼迫していることを示しています。

 

その他では初任給引き上げの動きも注目されます。三井物産や伊藤忠など大手商社は8年ぶりに初任給の引き上げを決めました。2016年入社の新入社員の給与は15年入社のそれに比べて20%弱引上げられるとのことです。またホンダ、JR東日本、日立などについても初任給の引き上げが報じられています。

 

以上を踏まえて、今年の賃上げは伸び率こそは昨年を下回るものの、評価できるものであると考えています。非正規社員の時給の伸びと合わせて、個人消費を下支えする効果が期待できるとの見方です。

 

先月米国や東南アジアを訪問して現地の投資家と日本株の見通しについて議論しましたが、一部には賃金が減ると思っている投資家もいました。賃上げに関する批判的な報道がこういう誤解を招いたものと思いますが、誤解が払しょくされれば、消費に対する過度の弱気な見方が修正され、日本株にとってのプラス要因になると考えています。

 

 


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