Brexitのここに注目-試されるのはEUの求心力

バックナンバーに戻る

2016/6/17

経済調査部

部長 門司 総一郎

 

6月23日には英国の欧州連合(EU)からの離脱(Brexit)に関する国民投票が予定されています。当初は残留派優位と見られていましたが、ここに来て離脱派優勢との見方が強まっており、世界の株式市場の波乱要因となっています。今回はこの国民投票を取り上げます。

 

英国のEU離脱は世界の景気や株式市場にマイナスと考えられています。これは離脱により英国がEU(及びEUと自由貿易協定を締結している国)との間の関税上の特典を失うため、輸出に打撃を受けると見られていることや、欧州事業の本部機能を英国においている企業が、そうした機能をドイツなどに移すと予想されることなどが理由です。英財務省は離脱が英経済に与える影響について、2030年までに実質GDPが最低3.4%、最大9.5%減少すると試算しています。

 

ただこの数字は幾つもの前提をおいたものであり信頼性は高くありません。また、英国のGDPは世界全体の3.9%(出所:IMF)に過ぎず、米国(24.5%)や中国(15.0%)ならともかく、英景気が低迷しても世界全体に与える影響は小さいといえるでしょう。

主要株価指数の騰落率

 

足元の株式市場もそれほど英国を気にしているようには見えません。Brexitへの警戒感が高まったのは6月に入ってからですが、そこから16日までの英国の代表的な株価指数FT100の下落率は4.2%、他の欧州株を下回っています。

 

「原油や金価格の上昇で時価総額の大きい資源株が買われ、指数を支えている」、「ポンド安なので為替レートの変動を考慮すれば他市場と下落率は変わらない」など色々指摘は出来ますが、少なくとも英国株が特に売られている訳でないことは確かです。

 

逆に下落が目立つのは南欧株です。また図表は付けていませんが、欧州では業種別には銀行株が大幅下落しています。これらを勘案すると、株式市場が警戒しているのは、英経済よりも通貨危機の再来ということになります。

 

EUに不満を持っているのは英国だけではありません。調査会社イプソスが5月に公表したアンケート調査結果によれば、「自国でも国民投票を行うべき」との回答は伊・仏で50%、独・スペインなどでも40%を超えています。また伊・仏はいずれも「実施すれば離脱を選択」との回答が40%超、EUの盟主独ですら34%が離脱をえらぶと回答しています。

EU残留・離脱を問う国民投票に関する各国の世論

4月5日、オランダで行われた国民投票はEUとウクライナの関係強化に向けた協定を否決、ウクライナを落胆させました。65日のローマ市長選では反EUの野党「五つ星運動」の候補が得票率首位で19日の決選投票に進んでいます。反EU的な動きはそこかしこで見受けられます。

 

「市場ではNexit(オランダ)Frexit()Gexit(独)といった造語が次々と生まれている」(日本経済新聞、425)そうです。英国は決して例外でなく、どの国にも英国同様の国民投票を実施する可能性を考えておかねばなりません。北でも南でも、勝ち組でも負け組でも、どこでもです。

 

以上を踏まえて、足元の株式市場が注目しているのは、英経済というよりも、EUの求心力と考えています。したがって23日の国民投票はその結果だけでなく、結果に対するEU加盟国の反応にも注目すべきでしょう。

 

特に国民投票の3日後の626日に行われるスペインの総選挙では、EUの緊縮策に反対する急進左派政党ポデモスの躍進が見込まれています。この選挙の結果も市場に大きな影響を与えるものと予想しています。

以上

 


本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した 情報源からの情報に基づき作成したものです。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。 本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成者の判断に基づくもので、 今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。 投資に関する最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。

PICKUPコンテンツ