株式市場見通し(16年7月22日)

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2016/7/22

経済調査部

部長 門司 総一郎

 

今年に入って日経平均は年初から2月まで下落。その後も1500017500円のボックス圏で推移するなど、さえない動きを続けてきました。しかし7月に入って動意付き、昨日は68日以来の高値となる16810円まで上昇しました。

 

今回の上昇は一時的なものでなく、日経平均はボックス圏の上限を超えて上昇すると予想しています。今回の「市場のここに注目!」はそう考える理由について説明しますが、3つあります。最初に世界経済の回復、2番目は機関投資家による株式組入れの引上げ、そして3番目は意外かもしれませんが、日本銀行の金融緩和や政府の経済対策が大きなものにならないことです。

日経平均の推移

まず世界経済ですが、景気の先行指標として注目される製造業の企業景況感指数(PMI)の動きを見てみます。PMIは足元の業況に関する企業へのアンケート調査の結果を指数化したもので、指数が上昇すれば企業の業況が改善、低下すれば悪化していることを示します。主要先進国のPMIはいずれも年初から低下しましたが、5月から6月にかけ底入れした形となっており、足元の景気が持ち直しつつあることを示しています。

 

先進国以上にPMIがしっかりしているのが新興国です。BRICsPMIは、ブラジルを除けば、そもそも年前半低下していませんし、中国を除けば直近上昇しています。その中国も4-6月のGDPが予想を上回るなど、他の指標には明るいものが増えています。今年の初めまでは「新興国発の世界経済悪化」との懸念が常に付きまとっていましたが、最近ではそうした懸念は薄らいでいるようです。

 

新興国の景気回復は、通貨の安定により金融緩和が可能になったことや、原油価格が上昇したことなどによるものですが、このように先進国、新興国の両方において景気が改善しつつあることが、日本を含む世界の株式市場の上昇持続を見込む第1の理由です。

製造業企業景況感指数

次は機関投資家の株式組み入れ引上げです。米国の証券会社BofAメリルリンチが毎月各国の機関投資家を対象に実施しているアンケート調査「ファンドマネージャー調査」には債券や現金、商品などと比較して現在株式のポジションは「オーバーウェイト」(以下「オーバー」)か、「「アンダーウェイト」(同「アンダー」)かを問う項目があります。上図の「ネットバランス」(以下「ネット」)は「オーバー」、「アンダー」と回答した投資家の比率の差をとったもので、上に行くほど株式「オーバー」の投資家が多いことになります。

 

「ネット」は昨年12月の41%から今年7月の0%まで大きく低下しました。これは20127月以来の低水準であり、機関投資家が全体として株式に対して慎重になったことを示しています。慎重になった理由として挙げられるのはまず新興国経済への懸念、次に先進国経済への懸念、最近では英国の国民投票などが挙げられます。

 

しかし、前述のように新興国経済への不安は薄らいでおり、先進国の景気も持ち直しつつあります。英国の欧州連合(EU)離脱を巡る混乱もかなり落ち着いた今の状況を考えると、機関投資家はここから過度に株式に慎重なポジションを修正するため、株式の組み入れを高めると思われます。その場合、日本株も買われることになりますが、これが日本株の上昇持続を見込む2番目の理由です。

 

3番目の理由は意外に思われる方が多いかもしれません。「金融緩和と財政出動こそ株高の条件」と考える方が普通だからです。

 

しかし、金融緩和も財政出動も今の株式市場にはほとんど力がありません。129日の日銀によるマイナス金利導入の際には当日と翌日こそ日経平均は上昇しましたが、そこから212日の安値まで急落することとなりました。また安倍晋三首相が消費増税延期を正式表明した61日以降も日経平均は下落しています。今年に入って金融緩和や財政政策は株価を押し上げることができていません。

 

本来金融緩和や財政出動が株価を押し上げるのは、その後の景気の回復を織り込んでのことでした。しかし、アベノミクスが始まった当初は金融緩和や財政出動が景気に好影響を与えましたが、それから3年が経過してもデフレ脱却を実現できてないことから、そうした政策への期待感は低下しました。

 

今では追加緩和を予想するエコノミストもその効果は疑問視するような状況です。これが政策が株式市場に与える影響が小さくなっている理由です。

 

安倍政権の金融政策や財政政策への批判的な見方も強まっています。本日の日本経済新聞の「政治が揺らす世界経済」と題する1面の特集記事は、政府がまとめる経済対策について「中身は公共事業をはじめ財政に頼った短期的な刺激策ばかり」と批判的にコメントしています。

 

この経済対策は規模20兆円といわれ、赤字国債増発の可能性も指摘されていました。またそれをファイナンスするための日銀の国債購入拡大も取り沙汰されていましたが、もしそうなれば日本政府は信頼を失って、1月のマイナス金利導入時以上に日本株が売られる可能性もあると見ていました。

 

しかし、本日の日経によれば財政出動の真水部分は3兆円程度のこと、最低限の財政規律は守られたと考えています。またヘリコプターマネーについても黒田東彦総裁が明確に否定したと報じられています。こうした筋悪の景気対策や金融緩和策の可能性が低下したことが、持続的な日本株の上昇を見込む3つ目の理由です。年後半の日本株は上昇基調を維持すると予想しています。

 

前述の日経記事は「遠回りにみえても、成長力を底上げする構造改革こそ、政治が安定している日本に課された課題である」と結んでいますが、全くその通りだと思います。これが実現することが、より長期にわたる日本株の上昇の条件でしょう。

以上

 

 


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