金融政策のここに注目-日銀金融政策決定会合(16年9月)

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経済調査部

部長 門司 総一郎

 

 

9月21日の金融政策決定会合で、日本銀行はこれまでの金融緩和策の枠組みの変更を打ち出しました。この変更はやや複雑なため、多くの投資家は日銀の意図を測りかねているようで、市場の評価はまちまちです。しかし、自分は今回の決定は従来の緩和策の問題点を軽減するものであり、評価できると考えています。今回はそう考える理由を説明します。

 

従来の金融緩和策には様々な問題点があります。例えば、政府や市場からの緩和圧力が強いため、必要以上に緩和方向にバイアスがかかってしまうこと、黒田晴彦総裁が「市場との対話」よりも「サプライズ」を重視しているため、金融政策の予見可能性が低く、ヘッジファンドなどによる投機的な売買が発生し、市場の変動が高まることなどです。しかし、今回の決定にはこうした問題点を緩和しようとする努力が見られます。

 

例えば、常に政府や市場から緩和バイアスがかかる理由の1つは、目標達成までの期間が2年と短いことです。その圧力に耐えかねて、日銀がやらでもがなの追加緩和に踏み込んでしまったのが、今年1月のマイナス金利です。銀行などの収益に負の影響を与えただけでなく、一般の人の間にも混乱を引き起こしました。今では黒田総裁もその弊害を認めています。

 

しかし、今回日銀は目標達成までの期間について「2年」を「出来るだけ早期に」との表現に置き換えました。これでも日銀に圧力がかかることに変わりはないでしょうが、それでも期間が曖昧となった分、日銀は冷静に考える時間を得ることになります。今後マイナス金利導入時のようなことが再発生する可能性は低下したといえるでしょう。

 

金融政策決定会合が近づくごとに、市場が乱高下するのは「お約束」となっていますが、その原因の1つが黒田総裁の「市場との対話」よりも「サプライズ」を重視する姿勢です。金融政策の予見可能性が低いため、追加緩和の有無や内容を巡って思惑が働き、市場が乱高下する仕組みです。

 

政策の見通しがたたないことは望ましいことではありません。投資家は一般に不確実性を嫌うからです。また変動が高まることも同じです。短期に売買するヘッジファンドなどを除けば、激しい変動は嫌われます。

 

しかし、今回は黒田総裁など日銀幹部は積極的に情報を発信、透明性の向上に努めました。その結果、決定された内容はほぼ予想された範疇に収まったと思います。会合前後の市場の振れもいつもほどではありませんでした。

 

この日銀の姿勢は予想外の成果を産みます。今回の決定でもっともサプライズとなったのは、マイナス金利の深堀りが見送られたことです。914日付の日本経済新聞が「日銀、マイナス金利を軸に」と報道したことからマイナス金利深掘り観測が強まり、銀行株中心に株式は下落しました。しかし、日銀はマイナス金利を据え置きます。

 

日銀がマイナス金利の引下げ検討をしているとの報道は本当だったのでしょうが、市場の反応を見て、引下げを取り止めたのだと思います。であれば、これは日銀と市場との対話の成功例といえるでしょう。

 

このように今後日銀が市場に対して丁寧に説明すれば、金融政策に関する思惑を封じこめ、決定会合前後での変動の高まりは抑制されることになるでしょう。また市場の声に耳を傾けることは、問題を包含する政策について日銀に再考する機会を与える効果があります。

 

こうした点は直接インフレ率を押し上げるものではありませんが、金融緩和によって生じる問題を軽減することにより、デフレ脱却に向けての努力を助けるものと考えています。また政策の予見可能性の高まりや市場の変動性低下は、不透明感や変動リスクを敬遠して日本株から離れていた投資家を呼び戻すことにもつながるでしょう。

 

冒頭述べたように、多くの投資家は日銀の意図を測りかねているようですが、今後こうした点が理解されることにより、今回の日銀の決定への評価が高まり、株価の上昇や円高の抑制を後押しすることになると予想しています。 

以上

 


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