米大統領選のここに注目!-政策的にはクリントン氏

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経済調査部

部長 門司 総一郎

 

米大統領選は投票日の11月8日まで残すところ1ヵ月余りとなりました。一昨日行われた第1回のテレビ討論会直後のCNNの調査では、ヒラリー・クリントン前国務長官の評価が高かったのですが、まだまだ分からないとの見方が多数です。今回の「市場のここに注目!」は両者の政策を比較しながら、それぞれが市場に与える影響について検討します。

 

 

経済政策では(公共投資)+(最低賃金引上げ)のクリントン氏に対し、トランプ氏は減税重視。それぞれ民主党、共和党らしい主張です。トランプ氏によれば減税額は、2001年のブッシュ減税の4倍に相当する「10年間で4.4兆ドル」とのことですが、財源についての説明は不十分で財政赤字拡大が警戒されています。それでも、最近の世論調査では「経済政策の評価ではトランプ氏が逆転するケースが目立つ」(日本経済新聞、9月22日)と米国民はトランプ案に魅力を感じているようです。

 

企業の租税回避目的での海外拠点設立(コーポレート・インバージョン)への対応でも、両者の主張は対照的です。懲罰的な出国税も辞さないとするクリントン氏に対し、トランプ氏は法人税率引き下げで企業を米国内に止める方針です。北風(クリントン氏)と太陽(トランプ氏)を連想させます。

 

なおトランプ氏は国外に滞留している米企業の利益を国内に還流させる場合、利益にかかる税率を10%に引下げると主張しています。これはジョージ・ブッシュ大統領(子)による2005年の本国投資法と同じであり、実現すればドル高を促すものとして注目されます。

 

ここまでを比較すると経済政策の規模、企業に対してフレンドリーな点から見て、株式にはトランプ案の方がプラスかと思います。ただし後で述べますが、自由貿易や移民に関してはトランプ氏の方が消極的であり、これらは米景気の足を引っ張る要因になりそうです。

 

株式以外では財政赤字拡大が懸念されるため、トランプ氏勝利の場合は米国債が売られそうです。また先ほど米企業の滞留利益還流はドル高要因と述べましたが、財政赤字の観点からは、むしろドル安の方がありそうです。逆に金など商品はドル安のヘッジとして買われる可能性があります。

 

 

外交、その他海外関連の政策ではトランプ氏の内向きな姿勢が目立ちます。クリントン氏も環太平洋経済連携協定(TPP)に反対など、以前に比べれば内向きですが、それでも安全保障、移民/難民、環境など両者の差は歴然です。

 

このトランプ氏の主張の中で世界経済や株式市場にとってもっとも脅威と思われるのは、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しです。世界の自動車メーカーはメキシコに自動車の製造拠点を置き、そこで作られた自動車を米国やカナダで販売していますが、本格的にNAFTAが見直されるのであれば、この戦略も修正を余儀なくされることになります。世界の自動車会社にとって打撃でしょう。

 

もしNAFTA以外の自由貿易協定(FTA)も見直すことになれば影響は一段と大きくなります。米経済にとってもマイナスです。

 

また足元の米国の失業率は9年ぶりの低水準です。移民受け入れを制限すれば人手不足が深刻化する恐れがあります。これも米国経済にとってマイナスと考えています。

 

以上を総合すると、トランプ氏の方が経済や株式にプラスの政策もありますが、特に通商政策のスタンスの違いから世界の経済や株式市場にとって政策面で望ましいのはクリントン氏であると考えています。もしトランプ氏勝利となれば、メキシコなど米国とFTAを締結している国の通貨や株式市場にとって売り要因との見方です。

 

以上

 


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