成長戦略のここに注目-外国人労働者が100万人突破

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2017/2/2

経済調査部

部長 門司 総一郎

 

すっかり影が薄くなってしまった「成長戦略」ですが、持続的な日本経済の拡大や日本株の上昇のためにはその実現が不可欠です。今回は久しぶりの成長戦略として外国人労働者(以下、単に外国人)の受け入れを取り上げました。

 

厚生労働省は201610月末時点で日本で働く外国人は前年比17.6万人増の108.4万人と発表しました。百万人突破は初めてです。国籍別には中国が2位以下を大きく引き離しての1位。以下ベトナム、フィリピンと続きます。

 

意外感があるのは5位のネパールですが、留学生のアルバイトが多いようです。私の自宅の近くにネパールのビールを出すインド料理屋があり、透明感があっておいしいので「なぜネパール?」と思いながらよく飲んでいますが、このデータを見て少し納得しました。

 

外国人労働者数の推移

 

人口減が見込まれる日本にとって、外国人の受け入れは重要な問題です。安倍晋三首相も「日本再興戦略」の中に「外国人材の活用」の項を設け、外国人受け入れ拡大に取り組んでいます。

 

日本における外国人の数は、データのある2008年以降一貫して増加を続けていますが、特に安倍政権発足(201212)以降はペースが加速しています。これは景気の回復や少子化で人手不足が顕著になったことなどが理由ですが、安倍政権の施策の効果もあります。

 

日本はいわゆる単純労働に従事する外国人の受け入れを認めていませんが、指定された職種での技能実習のため、実習生として入国した外国人がその職種の現場で最長3年働くことは認められています。これが技能実習制度ですが、この制度を活用して多くの外国人が工場や建設現場で働いており、事実上の単純労働者の受け入れ制度となっています。

 

人手不足が深刻化する中、企業からの外国人受け入れ拡大に関する要望が強まっており、実習制度の対象職種は増加しています。現在は74職種(日本経済新聞、127日付)とのことです。2015年には「惣菜製造」が追加されましたが、これを受けてヤオコーが2018年度までに16年度比3倍の200人に実習生を増やす計画を打ち出すなど、食品スーパーが実習生受け入れの拡大を決めました。

 

既に「介護」が追加されることも決まっており、職種は今後も増えそうです。実習期間についても最長3年から5年に延長されることが決まっており、技能実習制度を通じた外国人労働者の受け入れは、まだまだ増加が見込まれます。

 

技能実習制度は「量」の受け入れ拡大ですが、「質」の拡大に当たるのが「高度外国人材」です。この制度は経営者や技術者、スポーツ選手など高い技術や知識を持つ外国人を呼び込み、日本の経済成長に繋げることを目的としています。

 

具体的には年収、学歴、滞留期間などに応じて外国人にポイントを付与、一定のポイントが貯まれば高度人材として認定され、永住権申請に必要な滞留期間を通常の10年から5年に短縮するなどの特典を受けることができる仕組みです。日本再興戦略は「2017年末までに5000人、20年末までに1万人の高度人材認定」を目標として掲げていますが、昨年8月末時点で5917人が認定を受けており、第1目標は前倒しでクリアしました。2020年に向けて安倍政権は、永住権申請に必要な滞留期間を最短1年まで短縮するなど追加の優遇策を検討しています。

 

このような受け入れ策の効果もあって日本で働く外国人は100万人を超えました。しかし、韓国(20155月時点で外国人受け入れ数98.3万人)、台湾(15年末現在で59万人)などと比較すると日本の出遅れは明らかです。安倍政権は前述の技術実習制度や高度人材を通じた受け入れ拡大策以外にも様々な施策を検討しています。

 

例えば、技能実習制度は事実上単純労働者の受け入れ制度となっていますが、これは本来の趣旨に沿ったものではありません。そのため、正面から単純労働者の受け入れを認める制度の新設が検討されています。また技能実習制度では受け入れ企業による賃金未払いや実習生への暴行などが問題となっており、そのため、実習生を保護する仕組みの整備にも取り組んでいます。病院や学校など外国人が定住できる生活環境の整備も動き出しています。

 

国内の投資家はこうした動きに余り関心を持ちませんが、海外、特に年金やソブリン・ウェルス・ファンドなど長期の投資家は関心を持っており、日本が移民の受け入れに消極的な理由などについて質問を受けることがあります。

 

日本では移民受け入れの議論がタブー視されているため、安倍首相も移民の受け入れについては否定していますが、外国人材の活用は移民の受け入れとほぼ同じです。もし長期の外国人投資家がこの変化に着目すれば、改めて日本株投資を検討するきっかけになると思います。

 

また、今回の決算発表ではヤマトホールディングスなど人手不足で減益に陥る企業も出てきています。人手不足解消のためにも外国人の受け入れ拡大は日本経済にとって喫緊の課題です。

 

さらにトランプ大統領の誕生以来、米国は移民に対する厳しい態度に出ていますが、これは日本にとって優秀な人材を獲得するチャンスです。例えば、今後不足が見込まれるIT技術者を日本に呼び寄せるようなことが出来れば、日本の経済や株式市場にとって大きなプラスです。

 

このように日本の投資家の間では無視されていますが、安倍政権の外国人受け入れ策は既に実績を挙げています。ここで優秀な外国人を招くことができるような施策を打ち出せれば、日本株にとって大きな買い材料となるでしょう。安倍政権の外国人受け入れ策に注目と考えています。

 

以上


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