企業業績のここに注目-円高を克服した好決算

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2017/2/16

経済調査部

部長 門司 総一郎

 

2016年度10-12月の決算発表はほぼ終了しました。201510-12月期に比べて円高だったにもかかわらず増益で、好決算だったと考えています。今回はこの10-12月の決算について考えます。

TOPIX採用企業の10-12月決算(前年同期比)

岡三証券の集計によれば、213日までに決算が発表された東証第1部上場企業の10-12月決算は、前年同期比で売上が2.4%減、経常利益が8.8%増、当期利益が18.0%増となりました。経常増益は6四半期ぶりです。

 

経常利益を業種別に見ると、石油・石炭が前年同期の赤字から黒字に転換。その他、パルプ・紙、非鉄、卸売(主として商社)などが30%を超える増益となっています。

 

他方、輸送用機器、電器、電気・ガスなどが減益ですが、電器の減益はソニーや東芝など一部の企業が足を引っ張ったためで、これらを除けばむしろ好調です。そのソニーも映画部門の減損で大幅減益となったものの、この損失は前向きな損失と受け取られて悪材料とならず、逆にエレクトロニクス部門の回復が好感され、決算発表後の株価は急伸しました。

 

好決算を受けて、証券会社のアナリストは業績見通しを上方修正しつつあります。現在アナリスト平均の2016年度の見通しは売上が2.3%減、経常利益が0.3%減、当期利益が7.7%増です。決算発表が始まる前の時点で、今期の経常利益は5%減と見込まれてたので、5ポイント程度上方修正されたことになります。

 

冒頭申し上げたように、201610-12月は、15年の同時期と比べて円高です。201510-12月の平均ドル円レートは121円、これに対して16年は109円、決して小さくない円高です。にもかかわらず増益になった理由は4つあります。

 

ドル円レートの推移

 

最初の2つは石油価格の回復と新興国経済の持ち直しです。商社や石油・石炭、海運などの業績を押し上げることになりました。

 

3番目はスマホの高機能化やそれに伴うデータ送信量の増大です。スマホの高機能化による電子部品への需要拡大から村田製作所など電子部品メーカーが恩恵を受けた他、データ通信量の増大により、NTTなどの業績も押し上げられました。

 

4番目は個々の企業の努力による収益力向上です。これが今回の決算のポイントと考えています。減収増益になっていることから分かるように、日本企業の売上高利益率は上昇しています。岡三証券によれば、東証第1部上場企業の売上高経常利益率は201510-12月が7.7%16年が8.6%です。この売上高経常利益の上昇だけで経常利益が12%押し上げられたことになります。

 

これは個々の企業の努力によるものです。例えば日立は物流や金融など本業と関係が薄い子会社を切り離したことにより、10-12月期は連結では10%減収ながらも増益。三井化学も地道に続けてきた不採算商品の削減効果により今期は10%減収ながらも最高益更新の見通しです。キャノンの好決算には東芝メディカルの買収など、ここ数年進めてきたM&Aが寄与しています。

 

日本の株式市場では「企業業績は為替次第」との強い思い込みがありますが、そんなことはありません。当コラムでは「為替の効果は過大評価されている」と再三主張してきましたが、今回の決算はこの主張を裏付けるものと考えています。「為替に一喜一憂するだけでなく、企業の収益力の変化にもっと注目すべき」これが今回の最大の決算のポイントです。

 

以上

 


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