「失われた20年」を越えて-失われた20年は終了

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2017/3/29

経済調査部

部長 門司 総一郎

 

前回に続き、「失われた20年」を取り上げます。今回は失われた20年が終了したと考える理由についてです。

 

前回述べたように、失われた20年を引き起こしたのは、a.不良債権と金融システム不安、b.経済・企業の競争力低下、c.政治の機能不全、の3つの構造問題です。したがってその解決が、失われた20年終了の条件ということになります。不良債権問題は小泉純一郎政権において解決済みなので、今回は競争力と政治について考えます。

 

日本企業の経常利益の推移

 

財務省の法人企業統計によれば、日本企業全体の経常利益は、2007年度から09年度にかけて3年連続で減少したものの、その後は15年度まで6年連続で増加しました。2013年度には06年度を上回り、過去最高を更新しました。

 

今後についても大和証券は日本の主要上場企業210(大和210)の経常利益は2016年度が2%増、17年度が11%増と見ており、増益が続くと予想しています。

 

リーマン・ショック後の一時期、「日本企業は韓国企業や台湾企業に勝てない」といわれましたが、最近はそうした声も聞こえません。このように見て、日本企業の競争力は既に相当程度回復したと考えています。では日本企業はどのようにして競争力を回復させたのでしょうか?

 

最も重要なポイントは企業の経営姿勢の変化です。失われた20(特に後半)には「日本企業は必要以上に現金を抱えたがる」ということがいわれました。これはリーマン・ショックのような危機の再発に備えるためのものですが、こうした消極的な姿勢では競争力の向上など望むべくもありません。このままではじり貧という状況がしばらく続きました。

 

こうした企業の姿勢を変えたのが、2012年末に発足した第2次安倍晋三政権です。法人減税、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加、インフラ輸出など親ビジネス的な成長戦略を矢継ぎ早に打ち出しました。これが企業経営者にやる気を取り戻させます。

 

特に効果が大きかったのがコーポレート・ガバナンス強化です。これにより上場企業の経営者は株主に対して自己資本利益率(ROE)などの経営目標やその目標を実現するための戦略を提示し、実行することを求められるようになりました。もはや特段の理由なく現金を抱える経営は許されません。こうして日本企業は独自の成長戦略を打ち出すようになりました。

 

2月16日付当コラム「企業業績のここに注目-円高を克服した好決算」ではそうした企業をいくつか紹介しています。非中核事業を整理し、中核事業に経営資源を集中する日立、M&Aを活用して医療機器やネットワークカメラなど新分野への進出を図るキャノン、地道に不採算プロダクトの見直しを進める三井化学などです。

 

キャノンや日立だけではありません。今や多くの企業経営者にとってM&Aや事業ポートフォリオの見直しは必須のものとなりました。リーマン・ショック前には日本企業の欠点として、内製化へのこだわりや意思決定の遅さが指摘されていましたが、こうした欠点はかなり修正されたと思います。

 

こうした官民の努力によって、日本企業の競争力は回復、企業業績は連続して過去最高を更新することになりました。2番目の構造問題も既に解消されたといってよいでしょう。

 

3番目の政治の機能不全についても解決を見たと考えています。2006年から12年まで、7年連続で首相が交代しましたが、その後首相交代はありません。内閣支持率も高いままで、直近の日本経済新聞の世論調査(324-26日の調査)での内閣支持率は、森友学園問題にもかかわらず60%でした。

 

欧米と比べて日本の政治が安定していることは明らかであり、安倍首相のリーダーシップも評価されています。政治はもはや日本にとって構造問題ではなく、日本経済や日本株が持続的に成長、あるいは上昇するため要因の1つと考えています。

 

このように3つの構造問題は既に解消、健全な金融システム、回復した競争力、安定した政治と安倍首相のリーダーシップという3つのアドバンテージに変わりました。以上を踏まえて失われた20年は終了。現在日本の経済や株式市場は持続的な成長、上昇局面にあると考えています。

以上

 

 


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