為替市場見通し(17年4月12日)

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2017/4/12

経済調査部

部長 門司 総一郎

 

今年に入ってドル円は、緩やかな円高となっていましたが、3月中旬以降円高が加速し、昨日は約5ヵ月ぶりに1ドル=110円を割り込みました。今回はドル円の先行きについて考えます。

ドル円レートの推移

 

前回当コラム「株式市場見通し」(17年4月7日)では足元の株式市場の下落について「米大統領選後の株高の反動」といった趣旨のことを申し上げましたが、ドル円についても同様のことがいえます。大統領選後の円安が行き過ぎであり、その反動が足元の円高という訳です。ただし、直近は地政学リスクが円高の一因となっているため、この点についても検討します。

 

まずはテクニカル分析の観点からは円高一服のシグナルが出ています。昨年11月の米大統領選の結果を受けて、一気に円安が進みました。円は113日の1ドル=103円から、1215日の118円まで対ドルで下落しました。しかし、今年に入ってから上昇に転じ、足元110円を割り込んだことは先ほど申し上げた通りです。

 

この110円はテクニカル分析でいう半値戻しに当たります。円は対ドルで103円から118円まで15円下落したものの、118円から110円まで8円上昇し、下落幅の半分を取り返しました。これが半値戻しです。

半値戻しは大きな下落の後に現れるもので、「ここまでは反発してもおかしくない」として自律反発終了の目処とされています。この半値戻し達成が足元の円高はいいところまで来たと考える理由の1つです。

 

次は需給です。大統領選直前の米国の通貨先物取引における円のネット買い越し残高(買い持ち枚数から売り持ち枚数を引いたもの)は、対ドルで約4万枚の買い越しでした。しかし大統領選後は円売りが進み、昨年末には円は対ドルで9万枚の売り越しとなっています。4万枚の買い越しが9万枚の売り越しに転じたので、合計13万枚の売り越しがあったことになります。

 

この建玉残高はヘッジファンドなど投機筋のポジションを示すといわれます。したがってヘッジファンドなどが大統領選後に円を大量に売ったことになりますが、これが需給面での大統領選後の円安要因といえます。

 

今年に入ってからヘッジファンドは逆に円の買い戻しを進めた模様です。直近のネット円売りポジションは4.5万枚まで縮小しました。まだ4.5万枚残っているので買戻しが終わったとはいえませんが、かなり円売りポジションが整理されたのは事実です。今後データでポジションの整理が更に進んでいれば、買い戻しに伴う円高は概ね終了と考えてもよいでしょう。

 

最後に地政学リスクについて考えてみます。中東については今回の米国によるシリア攻撃は1回限りのもので、地政学リスクは低下すると見ています。

 

トランプ大統領の狙いはシリアの化学兵器使用に対する警告と、米国内での支持率テコ入れ、それから北朝鮮と中国へのけん制などであって、シリアを本格的に攻撃するといったものではないと見ています。「対イスラム国」でのシリアとの連携を否定したわけではありません。

 

またロシアやイランも立場上、米国を非難せざるを得ませんが、それ以上この件に関与する可能性は低く、最終的にはアサド政権も含めて、各国が対「イスラム国」で協力するという元のシナリオに戻ると見ています。

 

これに対して北朝鮮の出方を読みにくい東アジアの方が、不透明感があります。米空母カールビンソンが何事もなく東アジア海域を通過すれば、そこで緊張は一服ということになると見ていますが、万が一にも北朝鮮が動きを見せれば、地政学リスクが更に高まり、円高(株安)が進む可能性があります。メインシナリオは何もなしで、カールビンソンが無事この海域を通過すれば、円が売られると見ていますが、リスクシナリオにも警戒は必要と思われます。

 

結論として、テクニカルや需給の面から見て、足元の円高はいいところまで来たと見ています。ヘッジファンドの円買いポジションの整理の進展や、地政学リスクの低下などがあれば円安への転換も期待できると考えています。

 

以上

 


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