トランプ米大統領のここに注目-大統領弾劾と株式市場

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2017/5/18

経済調査部

部長 門司 総一郎

 

トランプ大統領がコミー前連邦捜査局(FBI)長官にロシアとの癒着に関する調査の停止を求めたとの疑惑から、大統領弾劾への警戒感が生じ、517日の米国株は大きく下落しました。今回の「市場のここに注目」は過去の大統領弾劾と株式市場の動きについて調べてみます。最初は米国のウォーターゲート事件です。

 

ウォーターゲート事件は1972年に起きた民主党本部への不法侵入事件をきっかけとした一連の政治スキャンダルを指します。当初は大きな問題ではなかったのですが次第に拡大、最終的には当時のリチャード・ニクソン大統領が辞任するに至りました。なおニクソン氏は下院の弾劾決議前に辞任したため、実際には弾劾は受けていません。

 

S&P500の推移

 

ウォーターゲート事件当時の米国株の動きを見てみます。S&P5001973年初めにピークをつけ、緩やかな下落に転じていましたが、徐々に下げが加速。高値から7410月の安値まで40%以上下落しました。

 

下落が加速した197310月はニクソン氏がアーチボルト・コックス特別検察官の解任を指示したところ、これを拒否した司法長官、副長官が相次いで辞任するなど、ウォーターゲート事件が泥沼化した時期に当たっています。一方ニクソン氏が辞任した19748月以降は株価が持ち直すなど、政治が株価に影響したように見えます。

 

実は、この間の株式市場の動きに大きな影響を与えたのは、197310月に発生した第4次中東戦争とその後の石油危機です。石油価格の高騰と金融引き締めにより米経済は後退局面に陥りました。これが197310月以降の株安の主因です。ただし、S&P500の山・谷が政治イベントと一致していることから、政治の影響もある程度あったと考えることもできそうです。

 

次はブラジルのジルマ・ルセフ前大統領です。ルセフ氏は201410月の大統領選で再選を果たしましたが、その前後から様々な不正資金疑惑が取り沙汰されるようになり、4月には下院が、5月には上院が大統領弾劾を決議。8月にはルセフ大統領は大統領職を罷免されました。

 

ボベスパ指数の推移

 

しかしこの間、ブラジルのボベスパ指数は上昇を続けています。商品市況の持ち直しや金融緩和への転換が理由です。政治の混乱は株式市場にほとんど悪影響を及ぼしませんでした。むしろ、新政権への期待感がプラスになったといえそうです。

 

最後は韓国です。韓国では201610月頃から朴槿恵(パク・クネ)大統領の友人の資金疑惑が発生、連日大規模な反大統領デモが続き、12月には国会が弾劾訴追を議決、今年3月には最高裁が罷免を決定するなど、あっという間にパク氏は退陣を余儀なくされました。しかし、この間の株式市場はブラジル同様に政治の混乱を嫌気することなく、上昇しています。

 

このように弾劾が株価にプラスになるケースとマイナスになるケースがありますが、これは大統領に対する国民の支持の違いが影響したものと見ています。

 

ウォーターゲート事件が始まったころのニクソン氏の評価は高く、1972年の大統領選では大勝で再選を決めてます。一方ルセフ氏やパク氏は支持率が低く、反大統領の街頭デモが相次ぐ有様でした。人気の高い大統領の場合、弾劾は株価にマイナスだが、人気のない大統領の場合は逆にプラスといえそうです。

 

この観点からすれば、もしトランプ氏に対する大統領弾劾が決まっても、その時の支持率が低ければ、次期大統領(=ペンス氏)への期待感からむしろプラスといえそうです。

 

 

以上


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