トランプ米大統領のここに注目-大統領弾劾の場合の株式市場

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2017/6/9

経済調査部

部長 門司 総一郎

 

5月18日付の「市場のここに注目!-大統領弾劾と株式市場」の続編です。トランプ米大統領とロシアの癒着を解明する動きが始まっており、68日には米上院特別情報委員会でのジェームズ・コミー前米連邦捜査局(FBI)長官の公聴会が行われましたが、大統領弾劾の可能性が少しづつ高まりつつあるように感じました。今回はもし弾劾となった場合、株式市場がどう反応するかについて考えてみます。

 

まず弾劾の可能性が高りつつあると考える理由について述べます。もともと8日の公聴会についてはそれほど思い切った証言は出ないとの見方が多かったと思います。しかし、コミー氏は予想に反して事前に書面でトランプ氏が「ロシア・ゲート」の調査に圧力をかけようとしたことを詳細に証言。また公聴会でも自身がFBI長官を解任された理由はトランプ氏が主張しているFBIの組織の混乱でなく、ロシア・ゲートの調査にあることなどを強く主張しました。これは事前予想と比べてかなり踏み込んだ発言です。

 

コミー氏自身はトランプ氏の干渉について、「司法妨害に当たるかどうかは私でなく、特別検察官が結論を出すことだ」と述べていますが、これが司法妨害と見なされれば、弾劾を求める声が高まりそうです。このようにいきなりこの問題の核心ともいえる司法妨害について踏み込んだ話が出たことが、弾劾の可能性を感じた理由の1つです。

 

トランプ氏と側近や政府高官、あるいは側近や政府高官同士の間での対立が強まっていることも、トランプ氏に不利な点です。その結果、関係者から「連日のように内部情報がメディアにリークされる異様な状態」(日本経済新聞、518)となっており、トランプ氏に都合の悪い事実が次々に明るみに出る恐れがあります。

 

トランプ米大統領の支持率

 

支持率にも陰りが出てきました。調査会社ギャラップによれば、64日までの7日間の平均支持率は38%、再度30%台に低下しました。他の世論調査でも「ここにきて30%台を示す調査結果が増えている」(読売新聞、69)とのことです。

 

上下院とも共和党が多数を占めていることもあり、実際に弾劾に至るハードルは高いとの見方もあります。それはその通りですが、この政治が機能不全化したままで来年の中間選挙に突入すれば、トランプ大統領の存在そのものが共和党の候補者にとって不利な材料になりかねません。その前に大統領を交代させた方がよいと考える共和党議員も出てくるでしょう。こうした理由から、徐々にではあるものの、弾劾の可能性は高まりつつあると見ています。

 

最後に弾劾に向けて議会が動き始めた場合の、米国株の反応について考えてみます。前回述べたように、評価が高い大統領の場合、弾劾手続き開始は株式にマイナス。評価が低い大統領の場合は逆にプラスとなる傾向があります。これは評価が低い大統領の場合はその立ち直りを期待するよりも、早期に退陣してもらって次の大統領に期待する方がよいと市場参加者が考えるからです。

 

この市場の反応が変わる境目としては、ブラジルのルセフ大統領や韓国の朴槿恵大統領の事例から判断して、少なくとも支持率が30%割れ、できれば20%前後まで低下することが条件と考えています。ブラジルでも韓国でも支持率がそれぐらいまで低下したあたりから、株式市場が上昇に転じた記憶があります。

 

トランプ氏の支持率は40%を割り込んだばかりであり、トランプ氏に期待している人は多いと思われます。よってここでいきなり弾劾を求める声が強まれば、米国株には悪材料と予想されます。しかし、そこから一段と支持率が低下し、30%を割り込むことになれば、そこは買い場ということになるでしょう。

 

なお、副大統領のペンス氏はトヨタやスバルの工場があるインディアナ州を地盤としていることから日本とも関係が深いため、大統領の交代は日本株にとっては一段と望ましいといえそうです。

 


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