成長戦略のここに注目!(その1)-法人実効税率引下げ

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経済調査部 部長 門司 総一郎

 

遅くなりましたが2015年初めての「市場のここに注目!」です。2015年の日本株は開始早々波乱含みとなりました。年初から大きく下落した昨年の再来を懸念する見方もあるようです。

 

しかし、今年に入って発表された景気ウォッチャー調査や消費者態度指数が予想以上に改善するなど個人消費は好転しつつある模様です。また昨年の消費増税のような悪材料がこの先控えている訳でもなく、日本株はむしろ上昇して然るべきと見ています。

 

加えて政策面でも進展が見られます。昨年の前半は集団的自衛権、後半は選挙に時間を取られ、コーポレート・ガバナンスなど一部を除けば、成長戦略の進展はほとんどありませんでした。しかし、昨年末には地方創生戦略や法人減税などが打ち出されるなど、ここに来て成長戦略は再加速しつつあるとの印象を持っています。市場参加者はこうした面をもっと評価すべきでしょう。

 

「市場のここに注目」では今回から3回にわたって、成長戦略の中で最近進展が見られた分野を紹介します。今回は法人実効税率の引下げを取り上げます。

 

12月30日に決定された与党の税制改正大綱では、法人実効税率は2015年度に2.51%、16年度に0.78%(以上)引下げられる予定となっています。これに基づけば現在34.62%の法人税率は15年度に31.33%、フランスより低く、ドイツよりやや高い水準に引下げられることになります。更に数年後(2019年度と見られている)には20%台まで引下げられる見込みです。

 

国/地方合わせた法人税率の国際比較(2014年3月時点)

 

財務省は今回の税制改正に伴う実質的な減税額を2,100億円と見ています。税率引下げによる減税は9,900億円、一方外形標準課税の拡大や繰越欠損金の控除見直しなど、代替財源確保のための増税が7,800億円。差引2,100億円との試算です。

 

赤字企業や業績不振の企業にとっては減税のメリットは小さく、一方外形標準課税の拡大や繰越欠損金の控除見直しのデメリットは大きくなります。そのため今回の税制改正は相対的に業績のよい企業に有利、悪い企業に不利ということになります。また代替財源確保の措置として研究開発減税の縮小や配当の損益不算入見直しなども予定されていますが、これらは研究開発費が大きい製薬企業や受取配当の多い地方銀行などにマイナスと見られています。

 

上場企業の純利益は30兆円程度なので、法人実効税率引下げの企業業績への直接的な効果は限定的ですが、それでも今回の引下げは評価できます。消費増税の先送りで財源が厳しいこともあり、初年度(2015年度)の引下げ幅は1-2%程度と見られていましたが、それを上回る引下げ幅になりました。安倍晋三首相が目標とする「数年で20%台」に大きく近づいたといえます。

 

そもそも法人実効税率の引下げは単に企業業績を嵩上げするためのものではありません。そんなことをすれば「企業優遇」との非難を浴び、内閣支持率の低下につながりかねないでしょう。そうでなく高い法人税率を理由とした日本企業の海外移転の阻止、あるいはグローバル企業のアジア拠点や研究開発拠点を日本に呼び込むことにより、国内での投資や雇用を増やすことが狙いです。

 

今回の減税は昨年の復興特別法人税の1年前倒しに続く、そうした目的達成への2歩目として評価に値すると考えています。勿論これで終わりではなく、今後も引き続き税率の引き下げを図ると共に、自由貿易ネットワークの拡大や電力料金の引下げなど、日本の立地競争力を高めるために必要な施策を着実に実行していくことが重要ですが。この様に考えると、今回の税制改正が収益力が高い企業に有利なこともお分かり頂けると思います。

 

元々法人実効税率の引下げは成長戦略の中でももっとも市場参加者の関心が高いテーマの1つなのですが、ここまで株式市場は法人実効税率の引下げに反応らしい反応を示していません。これは市場参加者が原油安やギリシャの選挙、スイス中銀のスイスフランレートの上限撤廃など海外発の材料に振り回されているためと考えています。

 

ただし、ここまで評価されていないからといって、いつまでも評価されないとは見ていません。今後海外発の材料が一服して市場参加者が冷静さを取り戻せば、今回の税率引下げが評価されて、日本株が上昇する局面があると予想しています。

 


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