『失われた20年』を越えて-景気は自律的な回復局面入り

バックナンバーに戻る

2017/7/5

経済調査部

部長 門司 総一郎

 

「『失われた20年』を越えて」シリーズの続編です。前回の「日経平均2万越えの意味」では、足元の日経平均の上昇が2万円を越えて続くと考える理由について述べましたが、その理由の1つに現在の景気回復が景気対策や金融緩和など政策に依存したものでないことを挙げました。今回はこの景気回復について考えてみます。

 

足元の日本経済は好調です。政府は622日の月例経済報告で、景気の基調判断を5月の「一部に改善の遅れもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」から「緩やかな回復基調が続いている」に引き上げました。上方修正は201612月以来です。

 

足元の景気回復を牽引しているのは、個人消費と設備投資、それに輸出です。海外景気の影響を大きく受ける輸出はさておいて、ここでは個人消費と設備投資について検討します。

 

今年1-3月のGDP統計では、実質消費支出は前期比0.3%増加しました。消費支出がマイナス成長を記録したのは2015年の10-12月期が最後なので、そこから個人消費は底堅い動きを続けていることになります。

 

消費を支えているのが所得の増加です。名目雇用者報酬の伸びは20131-3月以来前年比プラスを続けています。これは雇用者数の増加と賃金の増加の両方の効果によるものです。

 

名目消費支出と雇用者報酬

 

一方、名目消費支出の伸びは20161-3月から7-9月にかけて、3四半期連続で前年比マイナスを記録しました。そのため昨年の今頃は、特に海外の投資家から「日本では先行きへの不安などから所得が伸びても消費は伸びない」といわれたこともありました。しかし、その後消費が前年比プラスに転じたため、最近はそうした声を聞くこともなくなりました。

 

人口の減少が見込まれるため、大幅な伸びは期待できませんが、それでも個人消費の伸びは続くと見ています。今後も人手不足が続くことにより賃金が増加、それが個人消費を支えると見ているためです。

 

次は設備投資です。法人企業統計の設備投資は20134-6月以降前年比プラスを続けてきましたが、167-9月にはマイナスに落ち込みました。しかし、10-12月にはプラスを回復、2017年の1-3月の伸びは5.2%に加速しました。

 

設備投資の増加には多様な要因が寄与しています。製造業では人手不足を補うための設備投資が急務です。工場では自動化が急ピッチで進んでいます。ロボット技術やIOTに関連する通信技術の進歩も、自動化に貢献しています。

 

人手不足が別の形で設備投資に影響している事例もあります。セブン&アイ・ホールディングスはセブンイレブンに今期1832億円(前期比約50%)を投資する予定ですが、共稼ぎ夫婦の増加や高齢化で需要が伸びると思われる惣菜や弁当、冷凍食品などの売り場を拡充する予定です。

 

古くなった設備を更新する動きもあります。愛知県内の完成車工場の多くが築40年を超えるトヨタは、建物や設備の更新に取り組む予定です。ヤマトホールディングスもトラックの更新や老朽化した物流施設の建て替えなどに今期は650億円(前期比6.1%)の設備投資を予定しています。

 

外国人観光客受け入れのためのホテル建設も続いています。東京や大阪だけではありません。金沢にはハイアットセントリック、日光や北海道のニセコ町にはザ・リッツ・カールトンなど各地で外資系ホテルが2020年までに開業する予定となっています。

 

このように現在の設備投資は多様なニーズに支えられたものだけに、簡単には腰折れしないと考えています。

 

内閣府によれば現在の景気拡大は201212月に始まったもので、既に4年半続いています。当初この景気拡大はアベノミクスの第1、第2の矢、金融緩和や財政出動に支えられた官製の景気回復との見方もありましたが、今では政策に依存しない自律的な景気回復に変わりました。政策に依存しただけの景気拡大局面であれば、今頃は既に政策の効果が切れて終了していたと思いますが、自律的な景気回復に変わることにより今も続いており、今後も続くと予想しています。

 

足元の日経平均の上昇についても、自律的な景気回復に支えられたものである以上、2万円で終わりになることなく、今後も上昇を続けるとの見方です。

 

 


本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した 情報源からの情報に基づき作成したものです。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。 本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成者の判断に基づくもので、 今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。 投資に関する最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。

PICKUPコンテンツ