成長戦略のここに注目!(その2)-Make in Japan

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経済調査部 部長 門司 総一郎

 

“Make in India”(インドで作ろう)は昨年就任したインドのモディ首相のキャッチコピーの1つです。モディ首相はこのコピーを旗印に外資系企業の工場を誘致、既に韓国のポスコやドイツのフォルクスワーゲン、日本電産などがインドへの投資を表明するなどの成果をあげています。インドと事情は違いますが、日本でも最近海外から国内に生産を移管する動きが目立っています。今回はこの“Make in India”ならぬ“Make in Japan”を取り上げます。

 

最近報道された生産の国内移管や調達の国内品代替に関する事例を下表にまとめましたが、この他にもホンダが国内市場向け二輪車の生産を東南アジアや中国から熊本に移すことを検討中、またJUKIが栃木県の大田原工場で国内向けミシンの製造を再開するなどの動きもありました。

 

生産拠点の国内回帰や調達の国産品代替に関する最近の報道

 

こうした動きの背景にあるのは、円安、海外(特に中国)の賃金上昇、国内の余剰生産設備の3つです。また外食産業の原材料国産化については「食の安全」の問題も指摘されています。

 

日産のように輸出向けに国内の生産を増強する例もありますがこれは例外で、日本向けの製品を日本で製造するのが基本です。市場ニーズへの細かい対応や為替リスク回避のための「地産地消」が製造業のグローバル・スタンダードとなっていることを考えると、「日本向け製品は日本で生産」の流れはまだ続くと思われます。

 

景気への影響については、「余剰設備を活用するから設備投資への影響は小さい」、「工場も自動化されるため雇用増にはつながらない」など懐疑的な見方が多いようですが、それでもプラスであることは間違いありません。特に移転先は三大都市圏以外が多いことや農業にも恩恵があることを考えると安倍晋三政権の「地方創生」を後押しする効果が期待されます。また貿易面では生産の国内回帰は輸入を減少させるので赤字縮小要因です。

 

国内回帰の動きを更に推し進めるために政府としてなすべきことは自由貿易ネットワークの拡大や高いエネルギーコストの是正などで日本の立地競争力を高めることです。前回取り上げた法人実効税率の引下げも必要な施策の1つでしょう。

 

生産の国内回帰ほど注目されていませんが、それに劣らず重要なのが海外企業による研究開発のための日本進出です。こちらも最近動きが見られます。アップルが横浜のみなとみらい地区に医療・健康関連の研究開発拠点を設置する他、再生医療の分野でイスラエルのプルリステム、英国のリニューロンなどが日本への進出を決めました。バイエル、グラクソ、ファイザーなども日本の病院や大学との連携に乗り出しています。

 

医療関係の企業が日本に進出する理由の1つは基礎研究における日本の実力が評価されていることです。iPS細胞など基礎研究で日本は先行していますが、実用化では遅れています。大手製薬企業の日本進出の狙いは大学などと提携することにより基礎研究の成果を活用、実用化を図ることにあります。

 

もう1つは高齢化に関するデータが豊富なことです。例えば神奈川県は個人の血圧や血糖値などのデータを蓄積し、健康関連サービス創出につなげるプロジェクトを開始していますが、アップルは日立、富士通、タニタなどと一緒にこのプロジェクトの推進組織に名を連ねています。

 

規制緩和の効果も見逃せません。2014年11月の医薬品医療機器等法施行により、再生医療の薬の承認までの期間が2-3年に短縮され、世界最短で実用化できるようになりました。プルリステムやリニューロンの日本進出はこれが理由です。またアップルの場合は、みなとみらい地区を含める地域が国家戦略特区として認定され、今後の規制緩和が期待できることも影響したと見られています。

 

成長戦略の中でも規制緩和の分野は全般に遅れていると思いますが、こうした海外企業の研究開発のための日本進出は規制緩和の成果の1つといえます。生産の国内回帰が“Make in Japan”なら、こちらは“Develop in Japan”(日本で開発しよう)といったところです。

 

前回取り上げた法人実効税率の引下げ同様に、生産の国内回帰や海外企業による研究開発拠点としての日本進出はここまで株式市場でほとんど評価されていませんが、今後こうした-動きが評価されることにより安倍政権への信頼感が高まり、日本株が上昇する局面があると考えています。

 


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