安倍政権のここに注目-今後の政治シナリオと日本株

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2017/7/14

経済調査部

部長 門司 総一郎

安倍晋三内閣の支持率低下が止まりません。710日に発表された読売新聞の調査では前回の49%から36%に低下、同じく710日朝日新聞の調査では38%から33%に低下しました。共に201212月の第二次安倍内閣発足以来最低です。今回の「市場のここに注目」は今後の政治のシナリオと市場への影響について考えます。

 

まず政治シナリオですが、a.早期退陣、b.持ち直し、c.低空飛行、の3つのシナリオを考えてみました。順に説明します。

 

a.早期退陣シナリオ

意外に可能性が低そうなのが、早期退陣シナリオです。そう考える理由には、以下のようなものがあります。

 

まず挙げられるのは、国政選挙が当面ないことです。近日中に国政選挙があれば、自民党大敗→安倍退陣となってもおかしくありません。また選挙を待たずして安倍降ろしの機運が高まり退陣ということもありうるでしょう。しかし、次期衆院選は201812月までに実施すればよく、参院選は2019年です。これでは自民党内で早期に安倍降ろしの動きが強まるとは思えません。これが早期退陣の可能性が低いと見る第1の理由です。

 

ライバル不在も理由の1つです。安倍氏に強力なライバルがあれば、この機に安倍降ろしを仕掛けることになるのでしょうが、そうしたライバルは見当たりません。自民党の最大派閥は実質的に安倍派である細田派、それに次ぐのが自他ともに安倍氏の盟友と認める麻生太郎財務相率いる麻生派で、いずれの派閥も安倍降ろしを仕掛けることはまずないでしょう。

 

一方、対抗馬としてしばしば名前が挙がる石破茂前創生相の派閥は所属議員19名にすぎません(日本経済新聞、74)。このように強力なライバルが不在であることも、早期退陣の可能性が低いと考える理由です。以上の理由で、早期退陣シナリオの可能性は低いと見ています。

 

b.持ち直しシナリオ

今回の支持率低下や都議選大敗の理由として指摘されるのは政策でなく「相次ぐ不祥事とそれに対する内閣や自民党の傲慢な対応」(読売、710)です。読売の世論調査では、安倍内閣に「長期政権のおごりが出ている」という見方に対して、68%がその通りだと回答しました。であれば、こうした点を反省し、丁寧な国会運営や答弁を心がければ、支持率は回復に向かうと期待できます。

 

このシナリオが実現するかどうかは安倍氏次第です。安倍氏がスタンスを変えるかどうか現時点ではわかりませんが、閉会中審査に出席して、加計学園問題について自ら説明することを表明しているので、そこでの説明は参考になると思われます。

 

このシナリオにとって(それ以外のシナリオにとっても)、大きなポイントと予想されるのが、憲法改正です。安倍氏は今年の5月にそれまで想定されていた憲法改正のスケジュールを事実上前倒し、秋の臨時国会に自民党の憲法改正案を提出、2018年の通常国会で発議にこぎつけ、2020年までに施行する方針を打ち出しました。

 

しかし、この早期の改憲については自民党や公明党にも異論は多く、国民の間でも慎重な向きが多数です。711日発表のNHKの世論調査では秋の臨時国会への憲法改正案提出についての評価は「大いに評価する」が8%、「ある程度評価する」が28%、「あまり評価しないが」31%、「まったく評価しない」が20%でした。

 

安倍氏が前倒しスケジュールを撤回、時間をかけて憲法改正の議論を進めることを打ち出せば、支持率は上昇し、持ち直しシナリオの確率は高まるでしょう。しかし、前倒しスケジュールのために強引に審議を進めれば、党内外から反対が噴出し、場合によっては退陣に追い込まれることにもなりかねません。この憲法改正案の取り扱いが秋の臨時国会から来年の通常国会にかけての最大の注目点であり、どのシナリオになるかを決めるポイントと考えています。

 

c.低空飛行シナリオ

安倍氏の退陣がなく、さりとて支持率の回復もなければ、衆院解散に打って出ることができないまま、来年9月に自民党総裁選を迎えることになりそうです。支持率が低いままなので、再選は難しいと思われます。

 

以上3つのシナリオの生起確率については高い方から、持ち直しシナリオ、低空飛行シナリオ、早期退陣シナリオの順と見ています。早期退陣は憲法改正を巡る混乱で、安倍氏が求心力を失った時のみ、可能性がありそうです。

 

日本株への影響については、これまでの実績などから判断して、安倍内閣が求心力を維持したまま持続する方がプラスと判断しています。よって、日本株にとって望ましい順に、持ち直しシナリオ、低空飛行シナリオ、早期退陣シナリオとなります。早期退陣シナリオの場合、政治の混乱が日本株にとっての悪材料になると思いますが、次期政権も自民党政権であることはほぼ確実と思われるため、日本株の低迷が長期化するようなことはなく、一時的な調整にとどまると見ています。

 


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