成長戦略のここに注目!(その3)-視野に入るTPP大筋合意

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経済調査部 部長 門司 総一郎

 

「成長戦略のここに注目!」の最終回です。今回は最近にわかに合意の気運が高まっている環太平洋経済連携協定(TPP)交渉を取り上げます。

 

ここに来て進展を見せているのは農産物の関税などを巡る日米の二国間協議です。日本側の主張はこれまでとあまり変わりませんが、これまで関税撤廃一辺倒だった米国が譲歩することにより、協議が進んでいる模様です。

 

新聞などで報じられた日米協議の進展状況

 

米国産牛・豚肉、日本製自動車の輸入が急増した場合のセーフガードの発動条件などまだ協議すべき点は残っていますが、対日強硬派で知られる全米豚肉協会が豚肉の関税協議について「大きな進展があった」と評価していることなどから見て、日米協議については2月または3月に閣僚会合を開いて大筋合意となる可能性が高いと考えています。

 

日米協議以外で、難航している分野には米国と新興国(マレーシア、ベトナムなど)が対立する環境(投資や貿易促進のための環境規制の緩和制限)、知的財産(著作権、医薬品の開発データなどの保護)、国有企業改革(国有企業への優遇制度廃止)などがありますが、こちらも進展している模様です。

 

「環境については既に目処が立ち、国有企業改革も決着に向かい始めた」(日本経済新聞、1月29日)と報じられており、知的財産も「著作権の保護期間は作者の死後70年を軸に最終調整に入った」(同)とされています。一方米国が8年以上、新興国が5年以下と主張する医薬品のデータ保護期間については対立が続いている模様で、ここが最後の難関になりそうです。

 

まだまだ楽観はできませんが、「あと数ヵ月での合意を期待している」(フロマン米通商代表部代表)、「3月半ばにも合意が得られる可能性がある」(グアハルド・メキシコ経経済相)など関係者の楽観的な発言を見ると、大筋合意の確度は高まっていると感じられます。

 

TPP交渉の急加速については米国の中間選挙が終了したことが大きかったようです。もともと「選挙前は交渉は進まないが、終われば進む」といわれていましたが、その通りになりました。また選挙で共和党が圧勝したことも追い風になっています。

 

任期満了まであと2年となったオバマ大統領は何とかレガシー(遺産)を残したいところですが、国民皆保険制度(オバマケア)は評判が悪く、移民規制緩和や銃規制強化などは共和党の猛反対で進展を期待できそうにありません。

 

しかし「小さな政府」を掲げる共和党には自由貿易主義者が多いため、TPPについては民主党よりむしろ前向きです。また次の大統領選をにらんで、共和党にも反対だけの野党ではないところを示しておきたいとの判断があり、両者の思惑が一致したことが米国の態度の軟化につながりました。これが足元のTPP交渉の背景です。

 

ここまで法人実効税率の引下げ、“Make in Japan”、TPPと最近進展が見られた成長戦略の分野を3回にわたって紹介しました。また、春闘での賃上げのムードは高まり、通常国会では全国農業協同組合(JA全中)にとってより厳しい農業協同組合法改正案の提出が見込まれるなど、ここに来て成長戦略は再加速しています。

 

市場はこの成長戦略の再加速を完全に無視していますが、年初からギリシャやスイス中銀など海外要因に振り回されて投資家の目がそこまで行き届いていないことが原因です。また昨年目立った進展がなかったため、成長戦略への関心が薄らいでいることも理由でしょう。

 

しかし、長期的に日本経済や日本株を考える上で、目先の海外要因よりも成長戦略の方がはるかに重要であることは間違いありません。2月から3月にかけてはTPPや賃上げなどで具体的な成果が出てくることにより投資家が再度成長戦略への関心を強め、その結果日本株が上昇する場面があると予想しています。

 


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