ギリシャ危機のここに注目!(その1)-目先の危機は回避

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経済調査部 部長 門司 総一郎

 

今年に入ってまたギリシャが世界の金融市場の波乱要因となっています。最近では2月末で期限切れとなる欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)の3者(いわゆるトロイカ)による金融支援の延長を巡ってEUとギリシャが対立、延長が危ぶまれる場面がありました。

 

最終的には4ヵ月(6月まで)の支援延長が決まりましたが、しばらくはこの問題が折に触れて蒸し返されることがありそうです。今回と次回の「市場のここに注目!」はギリシャ情勢を取り上げます。今回はこれまでの動きを振り返ってみます。

 

ギリシャの基礎的財政収支と公的債務残高(年次、対GDP比)

 

ギリシャはこれまでトロイカの支援を受けながら、その条件である財政再建に努めてきました。その甲斐あって基礎的財政収支(プライマリー・バランス)は2013年に黒字化、目標の「2015年に名目GDP比3%の黒字」達成も視野に入っています。

 

しかし、財政再建のために公共投資の抑制、年金減額、公務員数の削減などの厳しい緊縮策を余儀なくされたため、景気は悪化しました。ブルームバーグによれば名目GDPは2010年から13年にかけて20%減少したとのことです。その結果、公的債務残高の対名目GDP比は2010年の148%からから13年の175%に上昇、目標の「2022年に110%未満」は逆に遠のいています。

 

長期に痛みを強いられながら、依然として緊縮策の出口が見えないことに対し、国民の不満が高まりました。そのため、今年1月の総選挙では債務の減免や現在の支援策の抜本的な見直しを唱える急進左派連合(SYRIZA)が第1党に躍進、同じく反緊縮策を掲げる右派の独立ギリシャ人党と連立政権を樹立し、SYRIZAのチプラス党首が首相に就任しました。

 

ところで現在の支援策の期限は2月末で終了します。3月にはIMFから受けている融資の返済などが控えており、支援が延長されなければギリシャ政府が資金不足に陥る可能性が指摘されていました。

 

これに対して、チプラス政権は緊縮財政の条件が厳しすぎるとして現在の支援策の延長を拒否。代わりに債務の減免や大幅に緊縮財政を見直した新たな枠組みでの支援策を求めました。しかしユーロ圏各国がこれを強く拒否したため、チプラス政権はやむを得ず現在の支援策の延長を要請、その上で条件となっている緊縮財政の緩和を目指す戦術に切り替えました。

 

最終的に2月20日のユーロ圏財務相会合は4ヵ月の支援延長を決定、ギリシャが提出した構造改革案も暫定的に承認され、目先の危機は回避されました。この構造改革案は支援延長の条件となるもので、財政再建策を含みます。改革案は今後細部を詰めて4月末までに正式決定される見込みですが、最終的な内容次第では実質的な緊縮策の緩和につながる可能性があります。これはチプラス首相の顔を立てたものと思われます。

 

チプラス首相はフランスやイタリアなどがギリシャに好意的な姿勢だったことから事態を楽観的に考えていたようですが、思った以上にユーロ圏各国は強硬でした。これは各国ともギリシャ支援に反対する勢力を抱えており、甘い顔をすると国内で反発を招きかねないとの事情によります。

 

またギリシャ同様に支援を受けて財政再建を進めているスペインやポルトガルは、国内に反緊縮勢力を抱えています。この両国はいずれも今年総選挙を控えており、ここでギリシャに譲歩すると反緊縮勢力を利し、与党に不利ということになりかねません。そのため、強く反対したと伝えられています。

 

ギリシャが資金不足に陥ることは当面回避されましたが、これで終わった訳ではありません。ギリシャは6ヵ月(8月まで)の延長を申請したのに対し、6月までしか認められなかったのは、7月、8月にECBが保有するギリシャ国債の償還を控えているためです。8月まで延長すれば資金繰りが楽になり、ギリシャが緊縮の手を緩めることになりかねませんが、それは許さないといったところでしょう。

 

したがって、今回の延長は暫定的なものであり、5月から6月にかけて予想されるギリシャとユーロ圏各国の緊縮策の見直しを巡る攻防こそが本番と考えられます。次回はこの5-6月の交渉に向けての見通しについて検討します。

 


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