日本人は自信を取り戻したか?(その2)-意識改革を示すM&A

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経済調査部 部長 門司 総一郎

 

「日本人は自信を取り戻したか?」の第2回です。今回はM&Aを取り上げます。今年に入って日本企業による外国企業のM&Aが急増していますが、これも日本人の自信回復を示す証拠の1つと見ています。

 

日本企業による外国企業の買収金額(四半期、10億ドル)

 

年初から3月25日までの日本企業による外国企業買収は総額248億ドル。2004年以降では12年10-12月の487億ドル、06年10-12月の259億ドルに次ぐ水準です。ただし、2012年はソフトバンクによる米スプリント買収(397億ドル)、06年はJTによる英ギャラハー買収(190億ドル)などの大型案件があったのに対し、今回そうした案件はありません。その分すそ野の広い外国企業買収ブームといえます。

 

日本企業による外国企業買収金額上位5件(2015年)と日本企業による外国企業買収金額上位5件(2014年)

 

この外国企業買収ブームには2つの側面があります。1つは今後予想される人口減と国内市場の縮小に備えた内需型企業のグローバル展開です。海外展開のためのネットワークや人材、ノウハウを獲得することがM&Aの狙いとなります。2014年の金額上位案件には食品、金融、通信などの企業が並びますが、これらは内需型企業のグローバル展開に該当するものです。

 

もう1つは新たな成長エンジン獲得のためのM&Aです。2015年の上位案件は日本郵政を除けば、こちらに分類されるもので占められていますが、これはコーポレートガバナンスの風潮が高まる中で、企業に成長のための投資を求める(あるいは手持ちの資金を株主に還元する)圧力が高まっているためです。日本生命(1兆円)、三菱UFJFG(3000億円)など数千億から1兆円の資金を今後M&Aに投じることを発表している企業もあります。

 

成長のための投資なので、M&Aだけでなく設備投資でも構いません。三井不動産が米国での高層ビル開発に1500億円、ファナックが国内の新工場建設に1300億円投資するなどこちらも動きが見られます。またパナソニックはM&Aや大型の工場建設などのために、従来の設備投資とは別に1兆円の投資枠を設定することを昨日発表しました。

 

このように日本企業(特に大企業)は守りから攻めに姿勢を転じつつあります。数年前までのように現金を抱えて円高におびえていた姿は見当たらなくなりましたが、これは企業経営者が自信を取り戻しつつあることを示すものです。

 

昨年8月29日付当コラム「成長戦略のここに注目-成長戦略は心を攻める」では日本人(特に企業経営者)に自信を取り戻させることが成長戦略の狙いと述べ、9月8日付の「『守り』から『攻め』への意識改革」ではそうした意識改革が既に始まっていることを紹介しました。賃上げやM&Aの動きに見られるように、足元では企業の意識改革は一段と進展しており、安倍晋三首相が成長戦略に込めた意図は多くの企業に共有されたと考えています。

 

投資家の意識も変わりました。9月16日付の「市場関係者は自信を持て」で述べたように、当時市場関係者の間では日本銀行の追加緩和や公的年金の株式購入などを求める声が強かったのですが、今ではそうした声は小さくなりました。代わって注目されているのが企業の「稼ぐ力」とそれを高めるための各企業の成長戦略です。昨日1兆円の戦略投資を発表したパナソニックの株価は本日大幅高しています(前場終了時点)。

 

企業経営者や市場関係者が自信を取り戻しつつあることから、ようやく日本株の上昇も本物になってきたと考えています。目先は利益確定売りによる調整があるにしても、日本株の上昇は年末にかけて続くとの見通しです。

 


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