株式需給のここに注目!(その1)-薄らぐ外国人売りの影響

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経済調査部 部長 門司 総一郎

 

今回からしばらく日本株の需給について考えてみます。初回のテーマは「外国人売り」です。バブル崩壊後の日本の株式市場では「外国人が買えば上昇、売れば下落」が長らく常識でした。しかし最近は外国人が売っても日本株はそれほど下がらなくなっており、この傾向に変化が見られます。今回は外国人が売っても日本株が下がらなくなった理由について検討します。なお文中の買い越し(売り越し)金額は、特に断らない限り現物と先物を合計したものです。

 

外国人の日本株買い越し額とTOPIX(月次)

 

手元にデータがある1997年7月以降で、外国人が月間で1兆円以上売り越した月は14回あります。そのうち東証株価指数(TOPIX)が上昇したのはわずか2回で残りの12回は全て下落、14回の平均騰落率は▲5.7%なので、「外国人が売れば下落」はまさにその通りです。

 

しかし最近この傾向に変化が見られます。過去1年間で外国人が1兆円以上売り越したのは2014年10月と12月、それに15年1月の3回ですが、2014年10月と15年1月のTOPIXは上昇、14年12月は下落したもののわずか▲0.2%です。「外国人が売れば下落」から「外国人が売っても下がらない」に変わったように見えますが、なぜ外国人が大幅に売り越しても下がらなくなったのでしょうか?

 

理由は2つあります。1つは積極的な買い手が国内に存在することです。バブル崩壊以降、国内の投資家は株式市場に対する自信を無くし、「押し目買い、吹き値売り」に徹しました。そのため外国人が売りに回ると買い手不在となり、株価は大きく下落することとなりました。

 

しかし、今の日本の株式市場には日本銀行の上場投資信託(ETF)購入や公的年金の日本株組み入れ比率引き上げ、上場企業の自社株買いなど国内に多くの買い手が存在します。これが外国人が売っても株価が下がらなくなった理由の1つです。

 

もう1つは外国人の売り方の違いです。過去外国人が1兆円以上売り越した時期の多くはITバブル崩壊(2000年4-5月)、リーマン・ショック(2008年10-11月)、欧州債務危機(2010年5-6月)など大きなショックがあった時期と重なります。こうした局面では値段にかかわらず売ろうとするため、株価は大きく押し下げられることになります。

 

しかし、最近の日本株売りはそうした世界的なショックによるものではなく、値上がりを受けての利益確定、あるいは出遅れている他市場への資金シフトのためのものです。何が何でも売らなければならないものではなく、株価を見ながらじっくり売っていくことになるため、同じ外国人売りでも株価を押し下げる効果は小さくなります。これがもう1つの理由です。

 

昨年12月24日に作成した「2015年の10サプライス」ではサプライズの1つとして「外国人投資家が7年ぶりに売り越すも日本株は上昇」を上げましたが、今年外国人が日本株を売り越す可能性はかなりあると思っています。そういうと「じゃあ日本株は上がらないんじゃないですか?」との返事が返ってきますが、そうではありません。

 

前述の日銀、公的年金、自社株買いの3つで8兆円程度の日本株買い需要が発生すると考えていますが、8兆円買うためには8兆円の売りが必要です。日本郵政などの新規上場を除けば、この買いに対する売りを提供できるのは外国人か個人だけでしょう。外国人も個人も売らないということになれば、日本株は値がつかず、気配値だけが上昇して行くようなことが起きかねません。

 

これが今年外国人は売り越しになる可能性があると考える理由です。ただし外国人売りと株価の関係は「外国人が売るから下がる」でなく「株価が上がるから外国人が売る」になります。したがって1兆円を超えるような外国人の売りであっても、それが利益確定売りや他市場へのシフトのためのものであれば、株価の押し下げ効果はそれほど大きなものにならないとの見方です。

 


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