株式需給のここに注目!(その3)-加速する株式への資金流入

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経済調査部 部長 門司 総一郎

 

「株式需給」の第3回です。前回述べたように、元々今年の日本株には日本銀行、公的年金、上場企業の3主体により8兆円の資金が流入すると予想していましたが、日本株を買う動きはこの3主体以外にも広まっており資金流入は更に拡大しそうです。今回はそうした動きについて見てみます。

 

上記3主体以外で注目されているのが共済年金です。前回触れた公的年金は民間企業の従業員を対象にした厚生年金などの運用を担当する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を指しますが、共済年金は主として公務員を対象にした年金です。

 

共済年金もGPIF同様に資産の多くを国内債券に投資しており、日本株の保有は一部にとどまっていました。しかし、今後はGPIFに準じて国内債券の保有を削減し、国内株式などを買い増す方向と見られており、日本株への影響が注目されています。ゴールドマン・サックス証券は「(国家公務員共済組合連合会などの)3共済がGPIFと同じ目安を導入すれば5.1兆円の国内株式買いが発生(する)」(日本経済新聞、2月26日)と試算しています。

 

2番目は日本郵政グループの金融機関です。4月1日に発表されたグループの中期経営計画(中計)によれば、ゆうちょ銀行は今年3月末時点で46兆円のリスク資産投資を18年3月には60兆円に拡大する予定です。現在ゆうちょ銀行が保有する日本株は2兆円、リスク資産投資の4.3%です。仮にこの比率が維持されるとすれば、3年間で6000億円の日本株買い余力が発生することになります。

 

一方かんぽ生命の資産運用について中計は触れていませんが、保有する日本株の金額が2013年3月末の2329億円から14年3月末の4170億円、更に同年12月末の9518億円と着実に増えていることから、増やす方向にあると考えられています。銀行と生保という業態の違いもあり、市場関係者の間ではかんぽ生命の買い余力はゆうちょ銀行以上に大きいとの見方が多く、「国内株式比重を民間生保平均並みの5.7%まで引き上げた場合、株式購入余力は3.8兆円になる」(みずほ証券、菊地正俊氏)との指摘もあります。

 

この他、地方銀行や生命保険などにも上場投資信託(ETF)などを通じたものも含めて、株式の組み入れを増やす動きが見られます。前回当コラムでは8兆円の新規資金流入で日経平均は24431円と述べましたが、もう少し上がってもおかしくなさそうです。

 

このように日本株への資金流入が拡大する理由は2つあります。1つは世界的な金融緩和、特に欧州中央銀行(ECB)の量的緩和により債券利回りが大きく低下、ドイツなどで短期債の利回りがマイナスになったことです。日本の投資家、特に金融機関は国内の金利が極端に低かったため、海外の債券での運用を増やす傾向にありましたが、海外の債券利回りも日本並みになったため、一部の資金を日本株に振り向けていると思われます。これは海外の市場でも見られる現象です。

 

もう1つは日本株に対する見方の変化です。昨年までは株価が上昇しても、金融緩和や公的年金の買いなどお上頼みの株高シナリオが主流で、景気や企業業績の先行きに自信を持てなかったため、機関投資家は日本株に慎重な姿勢を崩しませんでした。

 

しかし、今年に入ってから株式市場では「成長投資」や「株主還元」など企業の前向きな経営姿勢の変化を評価した株高シナリオが広まりました。これは投資家が日本株に自信を持ち始めたことを示すものですが、この自信が日本株への資金流入が拡大しているもう1つの理由です。

 

このように多くの投資家の資金が日本株に流入するのは1980年後半以来の現象です。最近海外では「ボンド・プロキシ―」(債券代替)という言葉が流行っているそうですが、これも80年代後半の「ディーリング相場」を思い出させます。前者は「低利回りの債券の代わりに高配当利回りの株式を買う」、後者は「機関投資家が債券のディーリング感覚で大型株を売買する」と内容は違いますが、「債券投資の感覚で株式に投資する」ことでは同じです。

 

このように述べると「すわバブルか!」と思われる方もいるかもしれませんが、そうではありません。低金利と量的緩和により世界的に金余りとなっている現状では株式市場への資金流入はまだ続くと考えています。ただし著名投資家のウォーレン・バフェット氏が最近述べた「金利水準が通常に戻れば、(米国株は)割高にも見える」(日本経済新聞、5月4日)は米国株以外にも当てはまるものであり、金融政策や金余りの状況が今後どうなるかについては充分注意することが必要と考えています。

 

参考文献
「日本郵政グループの資金運用計画」(みずほ証券、菊地正俊株式チーフストラテジスト)

 


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