イエレン発言のここに注目-米国株は割高か?

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経済調査部 部長 門司 総一郎

 

米連邦準備制度理事会(FRB)のジャネット・イエレン議長の「株式市場のバリュエーションはかなり高い」との発言が話題を呼んでいますが、当コラムも今回と次回の2回、米国株のバリュエーションを取り上げることにしました。

 

ただしイエレン議長は「極めて利回りが低い債券と比較すれば、(株式は)それほど割高ではない」とも述べており、ただちに下落するリスクが高いといっているわけではありません。著名投資家のウォーレン・バフェット氏の最近の発言「今の低金利が続けば(株式は)割安だが、金利が正常化すれば割高だ」とほぼ同じ見方と解釈することもできるでしょう。

 

さて本題ですが、バリュエーション指標として広く利用される予想株価収益率(PER)は直近で16.9倍です。ここ数年上昇しており一見割高そうですが、2000年以降の平均15.7倍と比べるとそれほどでもありません。「ITバブルの2000年前後は異常値として除外すべき」といわれそうですが、それならリーマンショックの2008年や欧州債務危機の12年も同様に外すべきでしょう。

 

米予想PERと10年債利回りの推移(月次)

 

イエレン議長やバフェット氏が言及しているように債券利回りと比較する考え方もあります。これは利回りが低いほどPERは高くなるとの前提に立つものです。2000年まではこの考え方は機能していました。1990-93年、96-98年は利回りが低下する中でPERが上昇、94年は逆に利回りが上昇してPERは低下しました。

 

しかし2000年以降、この考え方は機能しなくなりました。2000年から08年まで長期に債券利回りは低下しましたが、この間PERも低下。また2012年から13年にかけて利回りが上昇した時はPERも上昇です。2000年を境に両者の関係が逆相関から順相関に転じたように見えます。

 

今ではほとんど見ませんが、株価益回り(1株当たり利益を株価で除したもの、PERの逆数)と債券利回りを比較して株式のバリュエーションを評価する手法があります。2000年以前は益回りが利回りを上回るのが常態で、利回りがある程度益回りを上回る場合に株式は割高と評価されました。ITバブルの1999年末には利回りが益回りを2%以上上回り、株式がかなり割高であることを示していましたが、米国株はその後大きく下落しました。

 

米予想株価益回りと10年債利回りの推移(月次)

 

しかし、2002年以降は株価益回りが債券利回りを常に上回るようになりました。足元で両者の差は約4%、株式がかなり割安であることを示しています。イエレン議長やバフェット氏の発言はこうした分析を踏まえたものと思われます。

 

イエレン発言を受けて「米国株が割高になる金利の目処は」との問い合わせをいくつか受けましたが、以上の分析を踏まえてFFレートが1%や2%引上げられても割高とはいえないと考えています。バフェット氏はFFレートで4%近辺を割高と考える目途として挙げていますが、はっきり株式が割高というためには、それぐらいの金利水準が必要でしょう。もっともリーマン・ショックのように、割高でなくてもファンダメンタルズが急変して株価が急落する可能性は、常に念頭に置いておかねばなりませんが..。

 

次回は2000年を境に債券利回りとPERの関係が逆転した理由について考えてみます。

 


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