イエレン発言のここに注目-「金利低下=PER低下」のワケ

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経済調査部 部長 門司 総一郎

 

イエレン発言の2回目です。今回も金利と株価収益率(PER)の関係について考えてみます。

 

前回述べたように、米国では2000年を境に債券利回りとPERの関係がそれまでの逆相関から順相関に替わりました。米国だけではありません。日本、英国、ドイツでも2000年以降PERは長期にわたって低下しましたが、この間利回りも低下しています。

 

予想PERの推移(月次、倍、今後12ヵ月ペース)

 

順相関だからといっても、利回り低下がPERの低下を引き起こしているわけではありません。他の要因が影響していると考えるべきでしょう。その要因とは投資家のリスク選好です。

 

2000年以降はITバブルの崩壊、サブプライム危機とリーマン・ショック、欧州債務危機と断続的に世界規模の危機が発生しました。そのため投資家のリスク選好が極端に低下、株式などリスク資産を敬遠したことがPERの低下につながったと考えています。一方債券利回りの低下は各国中央銀行の超低金利策や量的緩和策によるもので、その他に株式などからの資金シフトも影響したと思われます。

 

2012年からは各国ともPERが上昇していますが、これは欧州債務危機が最悪期を脱した一方で、これ以降世界的な危機は発生しておらず、投資家のリスク選好が正常化し始めたためです。

 

10年債利回りの推移(月次)

 

米英独では2012年半ばに国債利回りが上昇に転じましたが、これもリスク選好の正常化が理由です。さらに2013年5月には米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長(当時)が量的緩和の縮小を示唆したことから、利回りは一段と上昇しました。

 

このように2000年から2013年にかけて国債利回りとPERが順相関となったのは、どちらが理由でどちらが結果ということではなく、投資家のリスク選好の上下に伴って両者が同じ方向に動いたためです。その結果、株式は債券対比で過去例がないほど割安な水準に放置されることになりました。

 

しかし、この割安さは断続的な危機の発生による投資家のリスク選好の極端な低下が前提です。既にリスク選好の正常化が進んだ現在はもはや許容されないと考えるべきでしょう。その場合予想されるのは債券の割高感、株式の割安感を解消するためのPERの上昇、または長期金利の上昇(またはその両方)です。

 

こうした状況においてはPERが過去数年よりも高いというだけで安易に株式を割高と見なすことは投資機会を見逃すことにつながりかねません。金融政策や債券利回り、投資家のリスク許容度などを考慮して、総合的に株式のバリュエーションを判断することが大切と考えています。

 


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