経済調査部 部長 門司 総一郎
6月には2015年版の日本再興戦略が策定される見込みです。株式市場ではもはや死語と化した感もある成長戦略ですが、当コラムが再三指摘するように、実際の成長戦略は着実に進展しています。
そのため、来月の日本再興戦略は市場関係者に成長戦略の進展を認識させ、それにより株式市場を押し上げると予想していますが、そこで「市場のここに注目」は今回から数回にわたって日本再興戦略を取り上げることにしました。初回は日本再興戦略の構成や内容についてです。
2013年も14年も日本再興戦略はまず「総論」、続いて「アクション・プラン」の構成となっており、アクション・プランは日本経済の成長力を高めるための課題やそれを達成するための具体的な施策から成り立っています。アクションプランには、「日本産業再興プラン」、「戦略市場創造プラン」、「国際展開戦略」の3つがあります。
日本産業再興プランは日本経済や企業、特に企業の競争力強化を目指すものです。2013年の日本再興戦略では「直ちに取り組むべき必達課題」と位置付けられており、アクションプランの中でもっとも重要といえます。ここに含まれる具体的な課題・施策には、以下のものがあります:
戦略市場創造プランは「健康医療」や「エネルギー」など日本が抱える課題を解決し、そのノウハウを他国に販売することによって新たな市場の創造を図るものです。具体的な課題・施策には以下のものがあります:
「健康医療」や「エネルギー」は理解できますが、「農業改革」や「観光立国」の趣旨は新市場の創造とは違う気がします。日本の農業や観光地としての競争力強化として、日本産業再興プランに移した方が分かりやすくなると思います。
国際展開戦略は日本再興戦略で「グローバル経済の中で、積極的に戦略的に勝ちに行くための、官民一体の取り組み指針」と定義されていますが、趣旨がはっきりしません。具体的な課題・施策には以下のものがありますが、他のアクション・プランと重複しているものもあります:
国際展開戦略は量も少なく(2013年版で日本産業再興プランは34ページ、戦略市場創造プランは30ページ、国際展開戦略は8ページ)、1つのアクション・プランとして独立させる必要はなかったと思います。3つの方がすわりがよいと思ったのか、それとも省庁間の主導権争いのようなものがあった結果なのか分かりませんが、このように日本再興戦略は系統だって整理されておらず、分かりにくい部分がしばしばあります。ただ2013年版に比べれば14年版の方が、整理されて分かりやすくなっていますが。
以上が過去2回の日本再興戦略の構成と内容ですが、次回からは2015年版の注目ポイントについて述べていきます。
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