日本再興戦略のここに注目-「成長戦略」でなぜ株高か?

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経済調査部 部長 門司 総一郎

 

引き続き日本再興戦略についてです。今回は本来前回取り上げる予定だったたテーマ「個々の施策を成長戦略と認識するのとしないので、株式市場への影響はどう違うか」について考えます。

 

当コラムは「市場関係者が成長戦略の進展に気付くことにより、日本株は大きく上昇する」と主張してきました。この見方に対しては「個々の施策が成長戦略であってもなくても、実際に日本株に影響しているのであれば同じでは?」との指摘もあると思います。

 

しかしそうではありません。個々の施策で捉える(そもそもそれを政策と認識する)のと、成長戦略の1つとして認識することの間には大きな違いが2つあります。1つは再現性の確度です。

 

個々の施策を評価する場合、その効果の再現性には不透明感が付きまといます。「今年は賃金が上がったが、来年も上がるかどうかわからない」とか「今年は外国人が大勢来て買い物してくれたが来年は来ないかもしれない」と考えます。

 

しかし、これが成長戦略という大きな政策の枠組みにビルトインされていれば、再現する確度が高まります。「政府が企業に要請してくれるから来年も賃金は上がる」とか「格安航空会社(LCC)の誘致や消費税免税品目の拡大など政府が手を打っているからこれからも外国人は増える」となります。

 

再現性の確度が高まれば株式に対する見方も変わります。例えば外国人観光客の増加で恩恵を受けた企業に投資する場合、来年外国人は来ないかもと思えば思い切った投資はできません。しかし、来年も外国人観光客が増えると自信を持てば、多少株価が割高に見えても投資するでしょう。再来年もその先も増えると思えばなおさらです。

 

同じことは賃上げや株主還元についてもいえます。1回だけと思うのと、今後も続くと期待するのでは、関連株のバリュエーションが変わってきます。これが個々の施策を単独で認識するのと成長戦略として認識することの違いの1つです。

 

もう1つの違いは人(安倍晋三首相)の評価が株価に反映されることです。日本電産の永守重信会長兼社長やソフトバンクの孫正義社長など、実績があり評価の高い経営者の場合、その企業の株価には経営者に対する評価が加味されるのが普通です。

 

経営者だけではありません。2013年から今年の初めにかけてインド株が大幅上昇しました。これは昨年首相に就任したモディ氏への期待感によるものです。首相就任は昨年5月ですが、株式市場はそれ以前からモディ氏への期待感で上昇を始めました。このように国のリーダーへの評価がその国の株式市場にプレミアムを与えることもあります。

 

今、市場関係者の間に安倍首相への期待感は余りありません。日経平均が20000円を超えるにあたってコーポレートガバナンス強化や賃上げなどの成長政策が大きな役割を果たしたのですが、これらが成長戦略であり、安倍首相が主導したものであるという認識がないのでは仕方ありません。

 

しかし、これらが成長戦略と認識されれば、ここまでの株価上昇は安倍首相の手柄ということになり、安倍首相への期待感が高まります。そうなれば日本株に「安倍プレミアム」が付くことになるでしょう。これが市場参加者が個々の施策を成長戦略と認識することによるもう1つの効果です。

 

当コラムが「市場関係者が成長戦略の進展に気付くことにより、日本株は大きく上昇する」と主張するのは以上の理由によりますが、そうした動きは既に始まっているように見えます。

 

予想PERの推移(月次、倍、今後12ヵ月ベース)

 

安倍政権発足後の予想PER(以下PER)は、2013年5月に15.5倍まで拡大した後、13-15倍で推移していました。しかし今年に入って水準を切り上げ、5月末には16.0倍に達しました。この背景には成長戦略や安倍首相への評価があるように見えます。

 

日経平均が2000年の高値を上回ったことにより割高感を指摘する向きもありますが、成長戦略が評価されてのことであれば、従来よりも高めのバリュエーションが許容されることになるので、過度に割高感を気にするのは投資機会を見逃す恐れもあります。引き続きここから年末にかけて日本株の上昇を予想しています。

 


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