内閣支持率のここに注目-内閣支持率は40%割れ

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経済調査部 部長 門司 総一郎

 

日本経済新聞(日経)とテレビ東京による7月の世論調査では、安倍晋三内閣の支持率が6月の47%から38%に低下、不支持率は40→50%に上昇しました。2012年12月に発足した現在の安倍内閣で支持率と不支持率が逆転したのは初めてです。今回と次回の「市場のここに注目」はこの内閣支持率について考えてみます。

 

安倍内閣の支持率はこれまで50%を上回る水準を維持していました。昨年何度か割り込むことがありましたが、いずれも一時的なものに止まっています。しかし安全保障関連法案(安保法案)の国会審議が始まった5月以降急低下、50%どころか40%をも割り込みました。首相官邸もある程度の支持率低下は予想していたでしょうが、さすがにこの水準は想定外と思います。政府・与党には危機感が走り、今週発売の週刊現代には早くも「安倍晋三、あっけない退場」と題する記事が掲載されました。

 

第2次/第3次安倍内閣の支持率/不支持率

 

安保法案はまだ参院での審議を残しており、ここでの支持率低下は安倍政権にとってゆゆしき事態には違いありません。ただ実際にはこの支持率低下が安倍政権の政策や金融市場に与える影響はそれ程大きなものにはならないと考えています。理由は3つあります。

 

1つは当面大きな選挙がないことです。もし衆院選などが間近であれば、安保法案はもちろん環太平洋経済連携協定(TPP)や原発再稼働など世論の反対が予想される政策については慎重にならざるを得ないでしょう。

 

しかし次の国政選挙は来年夏の参院選、まだ1年先のことです。安倍首相は支持率低下にもかかわらず今国会で安保法案を成立させる方針を維持しています。であればそれ以外の政策についても支持率低下を理由に方針変更、あるいは修正する可能性は低いと思われます。

 

2番目は野党の支持率低迷です。今回の世論調査で野党第1党である民主党の支持率は前回の8%から上昇したもののそれでも11%、与党に危機感を持たせるにはほど遠い水準です。これも支持率低下の影響はそれ程大きなものにならないと考える理由です。

 

3番目は支持率低下の理由です。2006年の第1次安倍内閣から2011年の野田佳彦内閣まで、発足時の内閣支持率がピークでその後急低下、1年前後で首相が退陣に追い込まれるケースが続きました。この異常事態が6年も続いたのは、衆参のねじれが常態化して内閣の政権運営能力が著しく低下したためです。特に民主党政権は党内抗争に明け暮れて政治が空転し、「決められない政治」と呼ばれました。

 

今回の安倍政権の支持率低下が政権運営能力の低下を理由とするであれば、このままずるずると支持を失って退陣に追い込まれることもあるかもしれません。しかし、支持率低下の理由はそうではなく、世論の反発を受けやすい安保問題に踏み込んだこと、そしてその安保問題を審議する国会の運営において緊張感のなさによる不手際がいくつかあったことです。

 

今回の安保国会では当初から政府・与党に気の緩みがあったと思います。例えば4月29日の米議会での演説で安倍首相は安保法案を「夏までに成就させる」(日経、5月11日)と表明しましたが、これは軽率な発言でした。これを受けて野党は安保法案に対する姿勢を硬化させたと伝えられています。

 

また自民党が推薦した憲法学者が安保法案を「違憲」と指摘したことや、若手議員が勉強会で報道機関を批判する発言があったことも緊張感のなさから来る失態でしょう。新国立競技場の建設費が際限なく膨らんだことについても同じことがいえると思います。こうした不手際がなければここまでの支持率低下はなかったと思われます。

 

政権運営能力が低下して「決められない政治」化すれば取り返しはつきませんが、気の緩みによる失態であれば、今からでも緊張感を持って対処すればこれ以上の支持率低下は回避できるはずです。これが今回の支持率低下の影響がそれ程大きなものにならないと考える3番目の理由です。

 

以上述べたような理由で今回の支持率低下が直ちに経済や金融市場に大きな影響を与える可能性は低いと考えていますが、さりとて安倍政権としてはこのまま低支持率を放置してよい訳ではありません。次回は支持率回復のために安倍政権が採ると思われる対応や、今後の注目イベントなどについて考えてみます。

 


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