内閣支持率のここに注目-支持率回復はなるか?

バックナンバーに戻る

経済調査部 部長 門司 総一郎


前回に引き続き内閣支持率を取り上げます。今回は支持率回復の可能性についてです。

 

支持率低下の主因は安全保障関連法案(安保法案)ですが、これを撤回することはできません。ただし世論調査の結果を見ると、国民の批判が多いのは法案そのものよりも、政府・与党の説明や衆院での強行採決に対してです。したがって参院でそうした点を修正することができれば、ある程度の支持率の回復は期待できると思います。

 

主要各紙の世論調査結果

 

参院での政府の法案説明には、衆院の時に比べて工夫が見られます。そもそも衆院での議論が分かりにくいものになったのは、野党に配慮して与野党の質問時間の比率を「1対6」(読売、7月28日)にしたところ、野党に「戦争法案」、「徴兵制」などのレッテルを貼られて憲法論争を余儀なくされたためです。そこで参院では質問時間の与野党比を「3対7程度」(同)とし、与党議員の質問に答える形で法案の中身を説明する方針を採っています。

 

説明の内容では、安保法案の必要性を訴えるため、北朝鮮の核ミサイル開発や尖閣周辺での中国船の動きなど具体的な事例への言及を増やしました。菅義偉官房長官が東シナ海での中国によるガス田開発の写真を公開したのも同じ趣旨と思われます。

 

また今回の法案には自衛隊の国連平和維持活動(PKO)への協力を拡大するものも含まれていますが、その理解を得るために南スーダンやソマリアでの自衛隊の活動の様子が報道陣に公開されました。こうした姿勢は支持率にプラスと思われます。

 

一方、強行採決(「60日ルール」を適用した衆院での再可決を含む)の回避はかなりハードルが高いと思われます。民主党が対決姿勢を崩さない以上、維新の党の協力を仰ぐしかありませんが、松野頼久代表は対案路線に慎重といわれます。

 

政府・与党としては橋下徹最高顧問や片山虎之助参院議員会長など対案提出に前向きな面々を味方につけ維新の協力を得たいところでしょう。場合によっては、維新が早期の審議入りを求めている統合型リゾート施設整備法案(カジノ法案)で譲って、代わりに安保法案で協力してもらうことがあるかもしれません。

 

国会運営以外でポイントを上げ、支持率回復につなげることも考えられます。例えば、新国立競技場の建設計画ですが、安倍首相が計画の白紙撤回を表明したことは世論調査で評価されたものの、支持率低下の歯止めにはなりませんでした。しかし新計画で具体的に建設費の大幅削減が示されれば支持率にも好影響が出ると思われます。

 

外交も比較的ポイントを上げやすい分野ですが、期待されるのは日中関係です。アジア・インフラ投資銀行(AAIB)の設立に当たって何度も中国から日本に参加の誘いがあるなど、最近は中国から日本に対するアプローチが目立ちます。9月初旬に安倍首相が訪中して習近平国家主席と首脳会談との話も出ていますが、これが実現して関係改善をアピールできれば、支持率にプラスになるでしょう。

 

このようにいろいろ手は考えられますが、客観的に見て早期の支持率回復は難しそうです。礒崎陽輔首相補佐官の法的安定性に関する発言など味方が足を引っ張る状況は続いており、日中関係の改善についても、安倍首相の戦後70年談話が控えていることなどから、早期に成果を求めるのは難しい気がします。何より採決で維新の協力を得る可能性は現状では低そうです。

 

ただしその一方で、礒崎発言はあるものの国会運営は衆院の時に比べると慎重になっていること、法案の説明も丁寧なことなどから、これ以上の支持率低下はあっても限定的と考えています。

 

支持率については、もし維新の協力を得て、円満採決に持ち込むことができれば、法案成立に先立って支持率は持ち直し始めると考えています。一方維新の協力を得ることが出来ず、60日ルールを適用することになった場合はその前後で支持率の低下が見込まれるものの、前述の国会運営の改善などから30%割れはなく、10月以降に徐々に回復すると見ています。

 

日本株への影響については前者の場合は強行採決回避が見え始めた時点からプラス、後者の場合は安保法案の審議が続いている間は株価上昇抑制要因になると見ていますが、押し下げ要因までには至らないとの見方です。

 


本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したものです。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点における当社の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあります。投資に関する最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。

 

PICKUPコンテンツ