中国のここに注目-年初の水準に戻った中国株

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経済調査部 部長 門司 総一郎


8月半ばから世界の株式市場は大揺れに揺れましたが、先週初めから落ち着きを取り戻しつつあります。このまま上昇基調に復帰すると予想していますが、震源地となった中国についてはまだ不安定な部分が残されているようです。そこで「市場のここに注目!」は今回から3回にわたって中国の政治や経済、株式市場について検討することにしました。今回は株式市場についてです。

 

今回の世界株安の理由とされたのは中国経済の先行きへの懸念ですが、中国株には当てはまりません。中国株の下落と中国経済の関係は「経済悪化懸念→中国株安」でなく、「株安→経済悪化懸念」が正しい解釈です。それでは中国株はなぜ下落したのか、その理由について考えてみます。

 

中国株式の動き(日次)、中国株式の信用買い残の推移(日時、兆元)

 

中国の株式市場は年初から底堅く推移していましたが、3月以降上げ足を速めました。年初から6月12日の高値まで上海総合指数は60%、深セン総合指数は122%上昇しました。しかし、そこから急反落、8月26日の安値までそれぞれ43%、46%下落しました。

 

6月にかけての株価の上昇は、景気や業績などファンダメンタルズの改善を伴うものでなく、「ミニ・バブル」と呼べるものでした。このミニ・バブルの原因は「政府が何かやってくれる」という期待感と信用取引を通じた個人の買いの2つです。以下、この2つについて考えますが、先に個人の信用買いを取り上げます。

 

中国証券金融公社によれば年初の時点で信用取引による株式買い残高は1兆元程度でしたが、3月頃から急増、6月のピークには2.3兆元に達しました。しかし株価が下落に転じてからは信用買い残の減少に伴う株価の下落が続き、信用の解消売りが株安の主犯といわれました。足元の信用買い残は1.1兆元、ほぼ年初の水準です。信用買い残の整理が進んだことは株価下落が終了したことを示す1つのシグナルと見ています。

 

この個人の株式投資を促したのは政策への期待感です。そもそも政府が景気の下支えの一環として株高を煽っているとの指摘もあり、「官製相場」との声も聞かれました。その結果、5月末の予想PER(株価収益率)は上海総合指数が18.2倍、深セン総合指数が40.2倍に達しました。上海はともかく深センははっきり割高な水準です。

 

中国株式の予想PER(月次、倍)

 

その後の株価下落により、足元のPERは上海が12.5倍、深センは24.9倍まで低下しました。深センはまだ割高感がありますが、上海は国際比較で見ても割安な水準なので、中国株全体としてはバリュエーションの観点からも下落はほぼ終了と考えています。

 

このように中国株の下落は経済の悪化を前提としたものでなく、政策への期待感と個人の信用買いで膨らんだミニ・バブルの崩壊によるものです。信用買い残の減少や予想PERの低下、また株価下落時の政府の迷走により政策への期待感が完全に剥落したことなどから株価の下落はほぼ終了したと考えています。

 

ただし、日本など各国の株価下落は本来あるべき水準からの下落であり、下落前の水準の回復が期待できますが、中国株は上昇前の水準に戻っただけなので、下げ止まっても反発力は弱いと考えています。

 

一方、ここから更に中国株が下落するためには本格的な景気の悪化など実態面での悪材料が必要ですが、次回はその可能性について考えてみます。

 


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