中国のここに注目-4つの経済指標に注目

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2015/09/09
経済調査部 部長  門司 総一郎


「中国のここに注目」の第2回です。今回は景気を取り上げます。今回の世界同時株安の主因は中国経済の悪化懸念ですが、ここまで景況感指数などソフトデータ(企業や消費者へのアンケートなどに基づく指標)には景気の悪化を示唆するものがあるものの、生産や投資などハードデータ(実際のモノやカネの動きに基づくデータ)はそれほど悪化していません。

 

株式市場の先行きを占う上で、ハードデータが悪化してはっきり「中国経済は悪い」となるかどうかは大きなポイントと考えています。そこで今回は注目度が高い月次のハードデータである、輸出、鉱工業生産、固定資産投資、小売売上高の4つについて検討します。

 

注目の中国経済指標

 

8月の輸出は8日に発表されましたが、前年同月比5.5%減となったため景気の「悪化」を示すものと受け取られたようです。しかし予想の6.6%減を下回る減少に止まったことや7月の8.3%減から改善したこと、また爆発事故で天津の港湾機能が麻痺したことを割り引く必要があることを考えると、それほど悪くないようにも思えます。また輸出金額は8月まで5ヵ月連続で増加しており、このままならいずれ輸出は前年同月比プラスに転換すると考えることもできます。

 

中国の輸出(月次、前年同月比)、中国の鉱工業生産(月次、前年同月比)

 

 鉱工業生産の前年同月比伸び率は3月を底に、6月まで3ヵ月連続で上昇しました。7月は低下したものの、8月は6.3%と7月の6.0%から小幅改善が見込まれています。固定資産投資も足元は極めて緩やかな低下となっており8月は7月と同じ11.2%増が見込まれていることからも「下落」から「下げ止まり」に転じつつあると見ています。

 

鉱工業生産などの下げ止まりの背景には政府の景気テコ入れ策があります。昨年秋以降、金融緩和や住宅市場テコ入れのための規制緩和、地方政府の資金繰りを支援することによるプロジェクトの継続など、政府は景気テコ入れ策を実施してきました。鉱工業生産などの下げ止まりは、その効果が出始めたものと思われます。

 

中国の固定資産投資(月次、前年同月比)、中国の小売売上高(月次、前年同月比)

 

小売売上高の伸びは4月に10.0%まで低下しましたが、その後は下げ止まっています。株価下落の影響が懸念されましたが、6月、7月のデータを見る限りでは影響はほとんど見られません。また7月は飲食業の伸びが12.2%増と2013年2月以来の高い水準になっていますが、これは反腐敗運動の影響が一巡した兆しかもしれません。

 

以上4つのハードデータを見ると、現状はいずれも「悪化」というより「下げ止まり」または「持ち直し」です。加えてエコノミストの平均予想では8月は4つの指標すべてについて7月と同じか、改善が見込まれています。

 

こうした点を踏まえて、市場の中国経済に対する悲観論は行き過ぎであり、その実態は実際には8月中旬以降の世界的な株安を正当化できるほど悪いものではないと考えています。

 

今後急速に悪化する可能性も低いと考えています。9月8日に中国財政部は「穏成長を支持する財政政策の諸措置」と題する声明を発表しました。内容はこれまでの財政支出の状況などで新たな経済対策を打ち出したものではありませんが、それでもこの声明はこれ以上の景気の減速に歯止めをかける政府の姿勢を示したものと解釈されています。

 

反腐敗運動の進展も今後の景気の先行きに明るい材料です。反腐敗運動は消費や投資の抑制要因となっていましたが、飲食業の売り上げ回復を見ると、以前に比べると摘発をなどを気にせず飲食できる環境になってきたのではと推察されます。

 

また、今年に入って石油、通信、自動車など大手国有企業のトップが、反腐敗運動の一環で交代させられました。こうした企業においてはトップが取り調べを受けている間、大きな投資はできなかったと思いますが、交代後は積極的に動くことが可能になると思われます。このように反腐敗運動による景気下押し圧力が緩和しつつあると思われることも、今後の景気にとって明るい材料です。

 

以上述べたように、現在の中国経済は8月中旬以降の世界的な株安を正当化できるほど悪い訳ではなく、今後そこまで悪化する可能性も低いと見ています。

 

にもかかわらず、ここまでの大きな株式市場の下落になったのはマクロ・ヘッジファンドなどの動きが下落を増幅したためと考えていますが、次回はこの点について考えてみます。

 


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